活用が進むデスクトップ仮想化ソリューション
国内のある企業では、一般社員が利用するデスクトップPCをすべて仮想環境に移行した。社員一人ひとりの机にはゼロクライアント端末が設置されており、端末上から仮想化されたデスクトップ環境を呼び出して通常業務を行うスタイルだ。
ミーティングの際は端末を持たずに会議室に移動して、会議室に設置されたシンクライアント端末にIDを入力し、自分のデスクトップ環境を呼び出して利用する。社外との商談などの際には、フロアに設置された大型モニター上に自分のデスクトップ環境を表示させる。また、無線を経由したモバイルデバイスからのアクセスも可能だ。このように、社内に設置されたほとんどの端末を「自分のデスクトップ環境」として利用できるようになっているのだ。さらに、この企業では、電話もソフトフォンに切り替えており、ゼロクライアント/シンクライアント端末上で電話を受けたり、電話をかけてきた相手の情報を確認することもできるようになっている。
VMwareのラージ・マレンパティ氏
「デスクトップ仮想化のソリューションを、コミニュケーション/コラボレーション基盤にまで拡大してワークスタイルを革新した好例だ。ペーパーレス化や電話機の削減によりコスト削減も実現している」
マレンパティ氏によると、世界的に見てもデスクトップ仮想化の導入意欲は高まっており、過去7四半期のうち6四半期で前四半期を上回る予約数を記録している状況だ。業種を見ても、金融、製造、流通、官公庁、教育機関といったように、特定の業種職種にとどまらないひろがりを見せている。ただ、導入の目的については、国内と海外で大きな違いが見られるという。
「海外企業の導入目的は、1番目がセキュリティの確保で、2番目がコストダウンという傾向がある。一方、日本企業は、1番目がリモートアクセス環境の整備で、2番目がセキュリティとなるケースが多い。モバイルを巧みに使いこなす日本の環境がこうした優先順位の違いにも表れていると感じる。その意味でも、今後はモバイルワーカーに対応したソリューションを強化していく予定だ」
VMwareは、スペインの通信業者テレフォニカと提携し、仮想化技術を活用して1台のモバイルデバイスを個人と企業の両方で利用できるサービスに取り組むことを発表しているが、同じような取り組みをアジアでも展開していくとのことだ。また、競合製品となる「Citrix XenDesktop」については、VMware Viewには、3つの強みがあるとして、次のように説明する。
「1つ目は導入と管理が容易なこと。2つ目は全体のコストを低くできること。3つ目はヘトロジニアス環境に対応していること。要するに『値段は半分、複雑さは3分の1、それでいて完成度が高い』と説明することにしている」
デスクトップ仮想化はこれまでシンクライアントとの違いが見えにくく、また帯域幅やグラフィックスによる制限などもあって一般業務で利用するには難しい面があった。だが、マレンパティ氏も言うように、こうした課題は急速に改善してきている。“ポストPC時代”のワークスタイルを実現する1つのアプローチとして今後に注目しておきたい。