メーカー各社でPC事業の組織再編が続いている。
特筆できるのは、これまで単独で事業を進めていたPC事業を、別の部門と統合するという動きが相次いでいるという点だ。
2011年実績で年間6233万台のPCを出荷した世界最大のPCメーカーである米ヒューレット・パッカード(HP)は、2012年3月21日、PC事業を担うパーソナルシステムズグループ(PSG)と、プリンティング事業のイメージング&プリンティンググループ(IPG)を統合し、「プリンティング&パーソナルシステムズグループ」を新設すると発表した。今後、日本においても同様の組織体制へと移行することになる。
HPのTodd Bradley氏(出典:HP)
新組織は、PSGを率いていた同社上級副社長のトッド・ブラッドリー氏が担当。同社では「2つの組織の統合によって、全世界における販売戦略やブランディング、サプライチェーン、カスタマーサポートの合理化を図り、さらなる顧客満足度の向上や、PCとプリンティングを横断した技術革新を加速できる」としている。
一時はPC事業の売却も検討していたヒューレット・パッカードが、収益性の高いIPGとPC事業を統合させることで、コストの効率化を図るのが大きな狙いとなる。
「脇役としてのPC」は国内メーカーで顕著に
一方、国内では富士通が動いた。マーケティング部門におけるPCと携帯電話ビジネスの融合を目的として、4月にPC事業のパーソナルビジネス本部と携帯電話事業のモバイルフォン事業本部を統合してユビキタスビジネス戦略本部を新設。商品企画機能およびグローバル関連機能を一本化した。
製品開発を担当している事業部については、ユビキタスプロダクトビジネス部門のなかで、従来通りPCとモバイルを分離しているものの、ユビキタスプロダクト製品全般のマーケティング、商品企画、セールスプロモーション、商談支援、サービス関連を統合した点が興味深い。
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また、ソニーは4月1日からの平井一夫社長体制のスタートにあわせて組織再編を実施した。同社執行役EVPの鈴木国正氏のもとに、同氏がCEOを務めることになる携帯電話事業のソニーモバイルコミュニケーションズと、これまで担当していたPC事業を行うVAIO&Mobile事業本部を収め、重点事業のひとつである「モバイル」領域として統合したのだ。
ソニーは2010年7月の組織改革で、かつてのネットワークプロダクツ&サービスグループ(NPSG)内に、VAIO事業本部と、ネットワーク対応のウォークマンなどを担当するパーソナルデバイス部門、モバイル機器全般を手掛けるネットワークモバイルセンターを統括したVAIO&Mobile事業本部を新設し、このなかにタブレット端末の開発を担当するモバイルデバイス部門を設置。これが、2011年9月発売のSony Tabletにつながっている。この4月からは、モバイルデバイス部門をTablet事業部に改称。VAIOとSony TabletをVAIO&Mobile事業本部の両翼の製品として展開する一方、今後は携帯電話事業を推進するソニーモバイルコミュニケーションズとの連携も見込まれることになる。
PC事業の統合は、すでに東芝が2011年4月に実施済みだ。