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オープンな世界はもう来ないのか?

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2012-07-24 11:42

 「かつての勢いを失った『オープン』--その精神と現状、今後について考える」という記事が掲載され、最近オープンソースというものをあまり意識しなくなった自分に気が付いた。この記事では、「オープンソースムーブメント」とは過去のものであり、企業もコンシューマーもクローズドなシステムにお金を払うようになってしまったという。

 オープン化という、エンジニアとユーザーによるコラボレーションは、もはや過去のものなのだろうか?

 かつて、オープンソースが登場した背景には、ひとつはインターネットを通じたエンジニアによるコラボレーション環境が整備されたこと、そしてコンピューターのコモディティ化の流れの中で、ソフトウェアのモジュール化が進んでいったことがある。

 結果的に、特定のアプリケーションスタック(層)をオープンソースで置き換えることが可能となり、OS、ミドルウェア、データベース、そしてついには業務アプリケーションに至るまで、開発者やユーザー主導のオープンソース開発が活発に行われることとなった。

 こうした動きに対し、一方では、オープンソースのエンタープライズ利用を促進するための商用サポートビジネスが立ち上がった。もう一方では、大手ソフトウェアベンダーが一度分断されたアプリケーションスタックを再度買収を通じて買い集め、統合ソリューションの構築を始めた。

 しかしながら、こうした拮抗状態を崩す象徴的な出来事が起こる。

 世の中の流れがオープンからクローズへと舵を切り始める事件として筆者の記憶に強く刻まれているのが、OracleによるSun Microsystemsの買収であった。「パーティシペーション・エイジ」を標榜し、オープンソースコミュニティを後押ししたSunの終焉は、オープン化の流れの敗北のように感じられた。

 コンシューマー領域においても、ソフトウェアとハードウェアを一体として提供し、さらにはiTunesやApp Storeのようなクローズドなビジネスシステムを構築したAppleが勝者となった。これは、コモディティ化とモジュール化の結果として欠落したユーザーエクスペリエンスをAppleが埋めたということだ。独自のクローズドな統合された仕組みによってのみ、他者には真似の出来ないユーザーエクスペリエンスが実現できる。

 では、モジュール化とオープン化の流れは、統合化とクローズ化の流れに屈してしまうのだろうか? 恐らくそんなことはないだろう。過去を振り返ってみよう。

 ハードやソフトが統合された仕組みとして提供されるのは今回が初めてではない。コンピューターの黎明期、メインフレームの時代には、ハードとソフトは一体として提供されていた。これが、インターフェースの標準化により、モジュール化され、多くのハードウェア、ソフトウェア企業の参入を可能とし、イノベーションが活性化したのである。

 その反動として、モジュール化とスタック化は、インテグレーションとメンテナンスを困難なものとし、コンシューマー領域においてはユーザーエクスペリエンスを犠牲にした。

 そして統合化の第二幕が始まる。つまり、統合化を通じた、一体サービスの提供とユーザーエクスペリエンスの向上だ。

 しかし、クローズドな環境は、いずれイノベーションのスピードを低下させ、開発者とユーザーのフラストレーションへと繋がる。統合化による効果が最大化している現時点では、全く次の動きを感ずることは出来ないかもしれないが、再びオープン化の流れが来ることは間違いないと確信している。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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