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グーグルの「邪悪な」節税をめぐって盛り上がる英国 - (page 2)

三国大洋 2013年05月21日 19時24分

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油に火を注ぐことになりかねないEric Schmidtの反論

 一方、GoogleのEric Schmidtは寄稿記事のなかで、一連の批判をかわすべく、「法人税の課税対象は利益であるべき(売上高ではなく)。ただし、利益の元となる価値が売上の生じた国・地域で生み出されたものとは限らない」「Googleは(価値の大半を生み出している)米国では年間20億ドルも税金を支払っている」「利益を汚いもののように言うが、新たな投資ができるのも利益があってこその話。投資ができなければ、そこから新たな雇用やそれを通じた新たな個人からの所得税を生み出すこともできない」などと、ほぼ従来通りの主張を一通り展開。

 そして「この税制に関わる議論を前に進め、現行のものよりも明快かつシンプルな税制システムの策定につなげることがわれわれの願い」としてエッセイを締めくくっているものの、これまでにBloombergの調査報道などを通じて伝えられているような節税対策の諸策についての言及もむろんなく、「自分たちにとって都合の良い内容しか書いていない」と言った主張に終始している印象だ(註2)。

 さらに、各国間の法人税の改訂が仮に実現して、政府の税収が増えたとしても「イノベーションや経済成長、雇用創出にマイナスの影響が出る可能性もある」とか、あるいは「Googleでは例えばロンドンに新拠点を設け、10億ポンドを超える投資をする計画で、これにより年間8000万ポンド程度の従業員からの所得税および5000万ポンドの印紙収入があがる見通し」などと記して、まるで「増税となったら、こうした投資も雇用もすべて無くなるぞ」と示唆しているかのようで、これでは却って英国民の感情を逆なでするのでは……。というような箇所も見られる(註3、実際に同記事の読者コメントはすでに400件を超え、その内容も収拾がつかないものとなっている印象)。

 ただし、Googleがバミューダ諸島に登記したペーパーカンパニーに売り上げを経由させて、年間約20億ドルも税金を節約したと伝えられたことに対して、「あくまで合法行為」「資本主義とはそういうものだ」「そういう仕組みをつくれたことを誇りに思う」などとSchmidtが啖呵を切っていたことを考えれば、今回の反論もとくに意外なことではないかもしれない(註4)。

 なお、この週末にGuardianのサイトで実施されていたオンライン投票では、「Googleが邪悪なことをしていると思うか」("Does Google 'do evil'?")という質問に対し、「Yes」と答えた回答者が78%に上っていた(註5)。

保守党キャメロン政権への外圧と内圧

 一方、欧州各国の政府は、長引く経済の低迷やその原因の1つとなっている財政難に四苦八苦しており、ますます新たな財源確保に力を注がなくてはならなくなっている(註6)。これを受け、現政権のDavid Cameron首相もG8主催を視野に「法人税逃れとは、断固として戦う」などと述べていた(註7)。

 しかし、Googleのような「多国籍企業による税金逃れの防止策について議論するためのG8--その開催に向けた準備として招集する識者の集まり(Business Advisory Group)に、規制の対象となる側の代表者たるSchmidtを参加させること自体いかがなものか」といった物言いがついたとしても、一向におかしくはない状況にも思える(註8)。

 さらに、20日のこの会合で「Cameron首相はSchmidtと税金の問題を話し合うのか」という記者団からの質問に対して、首相官邸の広報担当者は「回答を拒否した」などとも伝えられている(註9)。

 それでなくても、いまの保守党政権は「世情に疎い」などとさんざん叩かれてきており、David Cameron首相への支持率は今年春に就任以来最低を記録(註10)。また現政権の不人気に乗じる形で支持率を伸ばしている労働党(最大野党)のEd Miliband党首が「もし来月のG8で、多国籍企業による税金逃れを封じ込める具体的な取り組みが生み出せない場合、労働党は政権奪取後に一方的にでも対策を講じる」という強い姿勢を打ち出している(註11)。

 このGoogleをめぐる問題がCameron政権の命取りとなるかどうかはむろんわからないが、その進展に各国の関係者が注目していることは間違いなさそうだ。

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