Googleの主張を覆しそうな「内部告発」
Googleと英国議会との法人税(節税)をめぐるやりとりについては、この連載でも何度か紹介してきたが、ここに来てこの闘いが一気に加熱してきたようだ。現地時間5月18日には、GoogleのEric Schmidt会長が記した寄稿記事がThe Observerに掲載され、またこれを追いかけるように同19日には同社英国法人の元幹部による「内部告発」の記事がThe Sunday Timesに掲載されていた。
Eric Schmidtが20日に「Business Advisory Group」と称するメンバーの一員として、David Cameron首相らとの会見を予定していたことは、前回の記事に記した通り。また16日に英下院Public Accounts Committee(以下、PAC)にGoogle担当幹部が呼び出され、「本当に英国法人では取引のクロージングに関わる業務は行っていないか」と改めて詰問されていたことも前回触れたとおりだが、下記の動画はその委員会の模様を映した映像。
[MP on Google tax avoidance scheme: 'I think that you do evil'] (動画の中で、メガネをかけた年配の女性がMargaret Hodge委員長、そしてグレイのジャケットを着用した男性がGoogle担当幹部のMatt Brittin。この映像からも相当激しいやりとりが交わされていたことがうかがわれる)今回Sunday TimesにGoogleの節税の手口を告発したBarney Jonesという元社員は、2002~2006年に同社英国法人に在籍し、Google幹部が上記のやりとりのなかでも繰り返している「ロンドンにいる英国法人のスタッフは、英国顧客へ営業活動・取引には関わっていない」「英国の顧客が取引している相手はアイルランド法人」という主張を覆す証拠--あわせて約10万件もの電子メールや書類を保有、これを英国の国税当局にあたるHM Revenue and Customs に提出する用意があるとしているという。またJonesがすでにPACで証言しており、これが(上記映像にみられる)Hodge委員長の激しい詰問につながった、などとSunday Timesは記している(註1)。
Barney Jonesの話によると、Googleでは幹部の証言とは裏腹に、実際にロンドンにいる営業スタッフが英国内の顧客との交渉や契約締結をしており、また顧客の代金振込用口座も英国内にあるものを使っていたという。ただし、こうした証言や証拠が法的に有効なものと認められるかどうかは今のところ不明だが、今後の議論に向けて大きな火種となったことはほぼ間違いなさそうだ。
なお両国の法人税率は、英国が23%に対し、アイルランドは12.5%と半分に過ぎず、Googleの業務に関して英国のスタッフが関与したことが立証されれば、当然課税の基準は英国のそれになると思われる。NYTimesでは「Googleの英国における売上高は2011年に30億ポンド以上、それに対して同年の納税額はわずかに600万ボンド」、またReutersでも「売上41億ドルに対し、納税額は600万ポンド(約900万ドル)」などとしていた。
今回の件で、仮にGoogleのこれまでの説明が偽り(misleading) であったとなれば、「合法的な節税行為」というGoogle(や他の企業)の主張の根拠が失われることにもつながりかねない。
さらに、来月北アイルランドで開かれるG8サミットに向けて、「多国籍企業には支払うべきものを支払わせる。それが優先課題」とすでに明言しているCameron英首相あたりも、これまで以上に断固たる対応を迫られることになる可能性が高い。