教訓4:常にいい人でいる必要はない
「Linuxの開発にはたくさんの人が参加しています。『他人と一緒に仕事をするのだから、いい人でいなければならない』と思うでしょう。ところが、LKML(Linux Kernel Mailing List)に参加してみればわかりますが、オープンソースの開発者たちは非常に批判的で、いわゆる“いい人”ではありません。初めてパッチを投稿した人は、手厳しい批判や批評を受け、時には怒鳴られて面食らうでしょう。でも、それでいいのです」(Zemlin氏)
Zemlin氏によると、その攻撃的とも思えるやり取りがより良いものを生むのだという。ここでもZemlin氏は、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)で行われた研究を引き合いに出して、この教訓の正当性を説明した。
その実験では、参加者を2つのグループに分けて同じ課題を与え、1つのグループにはブレインストーミングを、もう1つのグループにはディベートを行ってアイデアをまとめるように指示したという。その結果、一切の批判なしで自由に意見を出し合うブレインストーミングよりも、各自の意見の優劣を討論しあうディベートの方がより良いアイデアを生み出したというのだ。
「重要なのは、お互いのアイデアに挑むのは、オープンソースの世界では悪いことではないことだと理解することです」(Zemlin氏)
この教訓は日本の開発者にも理解されてきているという。その証拠に12年前はLKMLに投稿される日本からのパッチはほぼゼロだったが、現在では全体の10~15%程度まで増えているそうだ。
教訓5:外部のR&Dを活用せよ
最後の教訓の説明を、Zemlin氏は次のように始めた。
「日本の産業界の特徴は、社内に巨大なR&D部門を持っていることです。ただし、今日では外部のR&Dをうまく活用している企業が成長するようになっています。なぜなら、新しいアイデアは社外からやってくることが多いからです」
外部のR&Dを活用するために、テクノロジのトップ企業には、外部R&Dを管理する専任の担当者がいるという。彼らは、どのオープンソースプロジェクトに注目し支援すべきか、どのようにそれを利用すべきか、どのライセンスを適用すべきかを常に考えている。
「社内のR&Dに何十億ドルも投資するのも結構ですが、オープンソースの世界とのより良いコラボレーションを望むなら、同じくらい外部のR&Dに注目すべきです」(Zemlin氏)
最後に、5つの教訓を紹介し終えたZemlin氏は、聴衆に次のように語りかけて講演を締めくくった。
「Linuxは20歳になりますが、今はまだオープンソースが世界を変え始めたばかりです。これから取り組んでも遅くはありません。あらゆるものがネットワークを介してつながっていく新しい世界で、オープンソースは接着剤のような役割を果たしています。みなさんが参加してコミュニティが大きくなれば、さらにより良いものが生み出せるようになるでしょう」
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