筆者は知らなかったのだが、Bill Gates氏(Microsoft会長)は昔から相当な読書家だったらしい。Googleには「ビルゲイツ読書家」「ビルゲイツ読書量」などといった検索キーワードが並んでいたりする。
そんなGates氏がお薦めする「今夏の読書リスト」と、それに同氏がいま一押しするVaclav Smil氏という著者・学者についての話がQUARTZ(Atlantic Monthlyからスピンオフしたオンラインニュース)に掲載されていた(お薦め図書については文末で簡単に触れる。いずれも英語のものであり、また筆者ではどれも読んでいないため。あしからず)。
今Gates氏のブログ「the gates notes」にアクセスすると、「地球を消費する」(“Consuming the Earth”)という英語のフレーズが目に飛び込んでくる。その下には、「我々の惑星は生物圏(バイオスフィア)と呼ばれる生命の層で覆われている。そのうちのどれほどをわれわれは使い尽くすことになるのか」というフレーズが続いている(註1)。
これがSmil氏の著書の1つである「Harvesting the Biosphere: What We Have Taken From Nature」についてのGates氏のレビューにつながっているのだが、その冒頭には「Vaclav Smil氏は、私がほかの誰よりもその著作を楽しみにしている書き手。『自分の書いた本を読む者などいない』と彼は冗談を言う――それでも著作は30タイトル以上もあるが、どのタイトルも実際に数千部程度しか売れていない。それでも私は彼が著した書籍なら全部読もうと思っている」といった一節もみられる(註2)。
また、読書リストにはSmil氏の著書・共著がふたつ挙げられているが、そちらにも「Smil氏は私が大好きな著者のひとり。『博識家』(“polymath”)という言葉は彼のような人々(を言い表す)ためにつくられたもの。彼は、エネルギー、イノベーション、農業、歴史、食事やそのほか多くの事柄について、思慮に富み、徹底した内容の書物を著す。彼の著作は全部読もうとしているが、あまりに出版のペースが速いのでなかなかついていけない(略)」などとも書かれている(註3)
なお、このレビュー記事のページは、ピューリッツァー賞をとったThe New York Timesのマルチメディア記事「Snow Fall」をちょっと思い出させるところもあるような実に秀逸な作りになっている。内容云々は抜きにして一見の価値あり(ただし、第三者による動画のembedを許していない点は、よくも悪くもGates氏っぽいところかも)
QUARTZの記事(註4)は、そんなSmil氏――「2011年までカナダのマニトバ大学で教鞭を執っていた」とある――に対する編集部からのメールインタビューだが、そのやりとりの一部をかいつまんで紹介すると、次のような感じになる。
編集部 あなたの興味の対象は信じられないほど幅広いが、学校ではどんなことを学んだのか?
Smil氏 自分は古典的な、昔ながらの欧州の教育を受けて育った。この世界で学位を取りたいと思ったら、あらゆる事柄を学ばなくてはならない。私が研究したのはドイツ人が「Naturwissenschaften」と呼ぶもの、つまり自然科学全般――生物学から地質学まですべてを含むものだった。だから、例えば「雲はどうしてできるのか」「動物はどうやって生きているのか」「岩石の作りはどうなっているか」といった自然に関することを私は知っている。それだけのことだ。
私はこの50年の間、1年にだいたい80冊の書籍を読んできた。(略)携帯電話も持っていない。ケータイメッセージのチェックやFacebookのアップデートに時間を費やしていたら、ものを読む時間はなくなってしまう。
編集部 「Harvesting the Biosphere」の執筆課程で学んだ重要な点は何か?