Microsoftの次期最高経営責任者(CEO)選びについては、8月にあったSteve Ballmerの退任発表の時に取り上げただけで、その後はそのままになっていた。あれから少しづつさまざまな話が断片的に出ているけれど、同時にこれといった確たる話も出ない……。そんな状態がしばらく続いていたので、なかなか触れる機会もなかったのだけれど、本決まりまでの暫定アップデートとしてこの関連の話を簡単にまとめておく。
まず、これまでのニュースの中で一番驚いたのは、Steve Ballmerが後任も決まっていないのにさっさと辞める準備を進め、盛大な「お別れの会」まで済ましてしまったこと。
Ballmer thanks Microsoft Employees in farewell address (長嶋茂雄の現役引退試合さえ彷彿とさせるような「お別れ会」)
プロ野球の例えでいえば、「次の四番打者を決めるのは監督やコーチ、あるいはフロントの責任」ということで、身を引くBallmerとしては「立つ鳥跡を濁さず」の言葉通り、さっさと席を空けるつもりなのかしれない。ただ、一方では「Microsoftのような巨大企業で経営トップ(期限を切ってあるにせよ)の席が事実上空席になってしまうというのはどうなんだろう……」などと不思議に思っていた矢先、7~9月期の決算が発表になり、業績が外部の予想を上回ったということで株価上昇。図らずも、Microsoftのようなドル箱事業を持つ巨大企業だからこそ、腰を据えたトップがいようがいまいがすぐには困ったりしない、というのが明らかになってしまった。自らの「CEO退任」のニュースで会社の株価が跳ね上がったBallmerにとっては「泣きっ面に蜂」といったところかもしれない。
余計な話がだいぶ長くなったが、Microsoftの次期CEO選びをめぐり、ここにきて「少々怪しい」といって過言ではないような話がいくつか出てきている。今回はそんな話を紹介する。
「検索関連のBingやXboxに関連する事業をやめたいと考えるような人間をCEOに起用するべきではない」との見出しがついた記事が、米国時間11日にArs Technicaというテクノロジ系サイトに掲載されていた。
・Microsoft shouldn’t hire any CEO who wants to kill Bing and Xbox - Ars Technica
前週末にBloombergが報じた「Stephen Elop(Nokiaの元CEO:現在は古巣のMicrosoftに復帰)が、CEOになれた場合を想定して、両事業の切り離しを視野に入れている」というニュースを受けたものだった。
・Microsoft CEO Candidate Elop Said to Mull Windows Shift - Bloomberg
この話、情報源は例によって匿名の事情筋――「Elopの考えを知る3人の関係者」ということで、その身元について何も明かしていないに等しいが、内容の中心は「一番の稼ぎ頭であるOfficeを事業の中核に据え、iOSやAndroid向けのOfficeアプリも積極的に投入、普及させることで、新たな収益形態をつくり出していく」といった戦略の方向転換に触れた部分。
iPhone/iPadやAndroid端末に押されて、Windowsのインストールベースが伸び悩み、もしくは減少気味の中で、その不足分をOfficeからの実入りで補う。あるいは一番のドル箱事業(cash cow)を死守するべく、Windowsを多少犠牲にしてでもOfficeのさらなる普及、拡大を図るという、攻撃と防御のどちらともとれるこの方向転換はそれだけでも大した話題だ(それが妥当なオプションかどうかは別にして)。
しかし、それよりも大きな反響を呼んでいたのは、この記事の後半の方で比較的軽く触れられていた「BingやXboxを切り離す」というオプションへの言及の方(当日のTechmemeは下掲のような感じで、わりと大きな反響があったことがこの絵(画面)からもうかがい知れるかと思う)
Techmeme