Lipson氏によれば、軍事用のロボットや「ルンバ」のようなお掃除ロボットを除けば、構造化された環境の外でロボットが普及することは、疑問視されている。しかし同氏は、技術水準はロボットが工場の外に出て、われわれの家にやってくるところまで来ていると話す。GartnerのフェローであるTom Austin氏もこの考えに同調しており、これにはAIの進歩が関係していると述べている。
「われわれは、新しいアルゴリズム(例:多層ニューラルネットワーク)、新しいハードウェア(並列処理、ネットワークのスループット、相互接続などの技術は、性能が大きく向上している一方で、価格は下がり続けている)、そしてハードウェアやアルゴリズムが利用できる巨大なデータの海の存在によって、とうとう新たな領域にたどり着いたと考えている。2010年代後半では、AI理論の専門家が当初描いた夢の多くが、現実のものになるだろう」とAustin氏は言う。
これは、Googleがこの分野で地歩を固めるとともに技術や優れた人材を蓄積しつつあり、本格的なロボット工学が消費者市場に入り込むという、避けることのできない流れに備えているということかもしれない。しかし、より可能性が高そうなのは、Googleは単に、同社の「ムーンショット」プロジェクトの1つとして、イノベーションを進めるために傘下企業のポートフォリオを充実させているということだ。
Lipson氏は、Googleが買収したロボット企業のリストは、過去にできなかったことを可能にするようなユニークなものではなく、特定の製品を念頭に置いたものでさえないかもしれないと考えている。Austin氏はムーンショット説が有力だと考えているが、Googleは長期的な投資も行っていると述べている。
「なぜこれらのプロジェクトを選んだのか?なぜならGoogleにとって、工学上の挑戦と社会への長期的な利益は、投資の動機として十分なものになり得るからだ(筆者は、Googleがこの種のプロジェクトからも、可能であれば利益を上げようとすると考えているが、この考え方に囚われ過ぎるのはやめておこう。Googleが半自動運転車のデモを行ったのは、利益を上げるためではなかった)。Googleは、同社のムーンショット精神を満たすためにそれを行ったのだ」とAustin氏は述べた。
Googleが何かをムーンショットプロジェクトとして位置づけたとしても、消費者向けの応用が不可能だということにはならない。Shaft Inc.は2011年に福島で起きた原発事故の後に、災害救助ロボットを作り始めた。これを「Googleクライシスレスポンス」の情報に基づいて進めることができれば、素晴らしいものになるだろう。
Boston Dynamicsの「Cheetah」は世界最速の歩行ロボットで、時速29マイル(約47km)超で走ることができる。
提供:Boston Dynamics
ロボット企業の買収は、Googleの無人自動車プログラムに利用するためのものだという考えの人もいる。Lipson氏によれば、無人自動車はGoogleがロボット工学に力を入れる大きな理由の1つだが、これらの買収はあまり助けにならない可能性が高いという。同氏によれば、(Googleのものかどうかはさておき)無人自動車は、人々が触れる最初の完全な自律ロボットになる可能性が高い。ところが、異常が生じる可能性が大きいために(センサーがたまたまビニール袋で覆われたり、水たまりの光の反射がカメラを妨害するなど)、開発が遅れているのだという。これらの新たに買収された企業は、革新性こそ高いが、こういった問題を解決する技術には取り組んでいないように見える。
Googleの広報担当者は、ロボット関連企業の買収の目標について質問された際、コメントを避けた。
ただし、注意すべき点が1つあるとLipson氏は述べ、「ロボット工学は、データを自動的に物理的なアクションに変えるという点で、ソフトウェアとは異なる」としている。
同氏は、Googleが買収した企業をどう扱うかに関わらず、こうした買収によって、ロボット工学は消費者市場で評価されるようになると述べている。Lipson氏は、Googleが同社の人材やその分野での検証作業を通じてイノベーションを後押しすることで、ロボット工学が安全な投資分野だと示してくれることに期待をかけている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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