IBM Cloud Vision 2014:ダイナミックに使えるハイブリッドクラウドが必要

廣瀬治郎

2014-04-18 17:58

 IaaS「SoftLayer」を買収したことでIBMのクラウド戦略は大きく変わりつつある。4月16日に日本IBMが開催したユーザーカンファレンス「IBM Cloud Vision 2014」でその実態を見ることができる。

 同イベントは、ITインフラの開発や新規事業の開拓を目指す企業や事業のマネージャーを対象としており、メインテーマでクラウドを「成長のためのビジネスインフラ」と位置付け、次世代のクラウドとは何かという命題を投げかけた。

 ユーザー企業や業界のキーパーソンを招いたセッションや最新技術を体験できるブース展示などを通じ、クラウドのあるべき姿や経営戦略の結び付けなどの話題について、IBMの戦略と方向性の共有が図られた。会場には1000人を超える来場者があり、IBMのクラウド戦略への期待が見て取れた。

Martin Jetter氏
日本IBM 代表取締役社長 Martin Jetter氏

クラウドは成長するためのエンジン

 オープニングセッションでは、日本IBM 代表取締役社長のMartin Jetter氏が登壇して挨拶した。

 「現在、私たちの世界では3つの大きな変化が起きている。1つめは、データが天然資源のように扱われるようになったこと。2つめは、クラウドによる変革。私はこれを、ITとビジネスプロセスをデジタルサービスとして提供することととらえている。3つめは、IBMが“エンゲージメント”と呼んでいるものだ。人や企業がモバイルやソーシャルビジネスを活用して、個々につながったり情報交換したりするようになった」(Jetter氏)

 Jetter氏は、これらの変化を「いずれかひとつを取ってみても、私たちの世界を再構築するような巨大なもの」として評価している。ではその中で、なぜIBMはクラウドに注目しているのだろうか。

 「今やクラウドは、企業であれ公共機関であれ、成長のエンジンの1つとなっている。日本で2015年にクラウド市場は170億ドル規模になると見込まれており、先進的な企業にとって大いに期待できるものとなっている。今回のイベントは、さまざまなチャンスを探索していただくため、クラウドに関する新しい視点やビジネスモデルについて情報を共有したい」(Jetter氏)

 同氏によれば、IBMはクラウド戦略に関して3つの命題を持っているという。1つめは、パブリックかプライベートかを問わずクラウド同士が連携し合う“ダイナミックなハイブリッドクラウド環境”である。2つめは、クラウド上のデータをオンプレミスシステムであるかのように扱える“データ管理と保護”の仕組みだ。3つめが、ユーザー企業における“ビジネスモデルの刷新”を提案することである。

 「私たちはクラウドのパワーを活用し、将来の課題を解決できるようにユーザーを支援していきたい。IBMは、エンタープライズクラウドのリーダーとして、70億ドルを投資してクラウドポートフォリオの充実を図った。世界中に設置された25のデータセンターに加えて、12億ドルを投資して15のデータセンターを追加することも決定している。日本でもインフラを拡張していく」(Jetter氏)

Robert LeBlanc氏
IBM ソフトウェア&クラウドソリューショングループ シニアバイスプレジデント Robert LeBlanc氏

クラウドをダイナミックに活用できる環境へ

 続いて、米IBM ソフトウェア&クラウドソリューショングループ シニアバイスプレジデントのRobert LeBlanc氏が「クラウド:成長と変革の原動力」と題した基調講演を行った。冒頭で、同氏もクラウドがさまざまな組織の成長に必要な要素であることを強調し、「今ある仕事を抜本的に変えるものだ」と述べた。

 LeBlanc氏によれば、IBMは巨大な投資をして構築した既存の情報システムである“Systems of Record”を突如捨ててクラウド化するのではなく、モバイルやソーシャル、アナリティクスといった要素で作られる“Systems of Engagement”と組み合わせた次世代のアプリケーション、ハイブリッド環境を構築しようとしているという。

 「このハイブリッド環境があるからこそ、生じた価値を事業のみならず、事業に関わる一個人に対しても提供できる」(LeBlanc氏)

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