三国大洋のスクラップブック

アップルはビーツ買収で何を手に入れるのか(後編) - (page 2)

三国大洋

2014-05-17 10:00

 ただし、そのための入力口(センサ搭載デバイス)がどうなるか、という話は(iWatchを除いて)ほとんどみかけない。Appleのことだから、まさかSamsungのように「とりあえずスマホ(Galaxy S5)に心拍数測定用センサを直付けしてみました」といったことはやらないだろう…。そういう線で考えていくと、Beatsのヘッドフォン/イヤフォンというのはかなり面白い存在に思える。

 また実際に、LGあたりはすでにそういた製品を発売しようとしているらしい。「Life Band Touch」というフィットネストラッカー、それと対になる「Heart Rate Earphones」という製品で、価格は前者が150ドル、後者が180ドルとのこと。

 機能などについては、ブレスレット型端末に高度計センサやら3軸式ジャイロスコープが埋め込まれていて着用者の運動量を測れるとか、イヤフォン(Bluetooth接続のワイヤレス式)に心拍数や血圧、酸素飽和度を測れるセンサーが埋め込まれているといった点はほぼ想定範囲内。

 つまりこの程度のもの――Appleの「Healthbook」アプリに含まれるとされるデータが集められるものなら、すぐにも実現できるということだろう。

 そうしたセンサ内蔵のヘッドフォン/イヤフォンとiWatch、そして“母艦”となるはずのiPhoneがどういう形で連携=役割分担するのかなどはまだよく分からない。ただ、データを集めるための接点(インターフェース)としてみると、かなり新奇なGoogle Glassなどよりも、Beats by Dr. Dreのヘッドフォンの方がはるかに有利なポジションを占めていることは簡単に想像がつく(社会的な抵抗が少ない、という意味でも)。情報の出力デバイスとしてみたとき、音声主体でどの程度の機能を提供できるかといった点はよく考えてみないとわからない。

 Nestを買ったGoogleとの比較というのも、頭の体操としては面白い(「アルゴリズムとセンサと--グーグルのNest買収をめぐって」を参照のこと)。「家庭内のいろいろなものにセンサを埋め込んでデータを集める方法」を見つけ出した、Nest共同創業者のTony Fadellに32億ドル出すことが評価されるなら、たくさんの人々(それも特に若い人たち)の頭や耳にセンサを配置できる方法(その可能性)を示したJimmy IovineとDr. Dreに同じような金額を出すというも同じにように評価されてしかるべきだろう。

 今のところ、「どういうデータをどう集めて、どう活用するのか」といった具体的な部分が明確になっていないので、評価されなくても仕方がないかもしれないが。

Beatsは“単なるコマ”か

 Appleがこれまで要素技術を持つ企業の買収――5億ドル以下のそれほど大きくない買収しかしてこなかったことは周知の通りで、The Verge記事にはその点をふまえて、「Beatsのサービスも製品も、それぞれひとつのコマ(駒)に過ぎないのではないか」との指摘もある。

 これらのコマを集めて作り出される全体像がどういったものになるかは無論まだわからないが、ここ1年ほどの間にAppleが採用した関連分野のエキスパートの顔ぶれ(主要な新規採用者の一覧リストを載せた記事がApple Insiderにある)からは、かなり間口の広いものになりそうな感触も伝わってくる。


[ESPN The Mag: LeBron & Dr. Dre]
(Beatsのヘッドフォン普及で大いに貢献したLeBron James。2013年初めにはDr. Dreとともに「ESPN Magazine」音楽特集号の表紙を飾っていた。The Verge記事には「2008年にJimmy Iovineが知り合いのMaverick Carter――LeBronの幼なじみで、個人事務所LRMRの責任者――と話をつけ、LeBronから北京五輪に参加した米男子代表チームのメンバー全員にBeatsのヘッドフォンを配らせた」などとある。LeBronは、2012~2013年シーズンの開幕前からSamsungとGalaxy Noteのエンドースメント契約を結んでいるので、それとの絡みはどうなのか、といった点も気になるが、検索してみても詳しい情報は見つからなかった)

(敬称略)

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