製造業回帰の世界的な流れ
各国で進むIndustry 4.0への取り組みは、自国の製造業界を革新することで国際競争力を強化すると同時に、製造業の国内回帰を目指すものでもあるとYee氏は言う。
「製造業が他の業種と異なるのは、製造分野だけでなく、流通、販売、アフターサポートなど多様で多くの雇用をもたらす点です。製造ラインは長く使われるため、長期的なサイクルでの投資につながります。こうした他の業種にない特徴から、米国など過去20年くらい製造業離れが進んでいた国でも、今となって取り戻そうと動き出しているのです」

製造業は雇用が広がる乗数効果の高い産業だという
製造業では、過去20年ほどの間にアジア各国が大きく勢力を伸ばしている。欧米は、そのアジアに製造をアウトソースし、ソフトウェアやITサービス、投資などへ産業をシフトしてきた。今になって、これを再び取り戻そうとしているのだ。
リーマンショックに端を発した金融危機が金融業界の目を製造業に向けさせたという面もあり、国内の製造業を再び活性化させ、雇用を創出しようとしているのである。こうした国際競争の中で、どの国が伸びてくるのだろうか。
アジアがリードする時代に
「私の担当地域であるアジア太平洋地域は、現在のところ世界の製造業の中心です。日本以外のアジアでは、過去数十年にわたって製造業はローコスト志向でした。しかし、最近は日本のリーダーシップ低下に加え、他のアジア諸国も技術が向上しています。そこを金融危機が襲い、中国なども次世代製造業へ向けて取り組むようになりました。次世代の製造業の主役の座には、向こう30年くらいの間アジアがつくと思っています。近年ではアジア諸国の教育も充実してきたし、システムもある、そして何よりもコンシューマー市場が大きい。こうした条件がそろっているのです。今後30年、もしかしたら50年、最も大きなチャンスをつかむのはアジアです。だからこそ、米国やドイツが必死になっているのです」(Yee氏)