複雑化するプロセスを優位性に変えるPLM
そうした感覚に敏感なマスメディアやソーシャルメディアなどを通じ、ネガティブな評価が恐ろしいほどの勢いで広まってしまい、競合製品に顧客を奪われてしまいかねない。
「昨今では製品を市場に出す時から高い品質を実現していないと市場で戦えません。一方で、コンピュータの処理能力もずいぶん高まってきており、モデルベースのテストやシミュレーションを活用して、コンピュータでできることはコンピュータでやっていくことで、品質を上げていく必要があります。製品のアイデアから設計、エンジニアリング、計画、製造、アフターセールスまで全てに対応し、複雑性を競争優位に変えることができるのがPLMです」(Yee氏)
同社では、PLMをより広く深く採用していくことで価値を高めていこうとする「HD-PLM」コンセプトを掲げている。個々の部品、製品のモデル化に始まり、製造(マニュファクチャリング)、設計(エンジニアリング)へのモデルベース導入、さらには企画からアフターサポートに至るまでのライフサイクル全体に及ぶエンタープライズレベルまで、視野に入れたものだ。
設計図を作成するCAD、それをもとにモデル化するCAM、設計図やモデルから部品を作り出すNC工作機械、それらがPLMソフトウェアの源流となる技術だ。
過去四半世紀ほどの間、それぞれが関連し合って高度化が進み、製造業の変革につながった。工業製品の電子化と並行して、製造業の電子化も進んできたのである。そして現在では、製品と同じように、コンピュータによる製造業の新たな性能向上が大きなポイントとなってきている。
「注目されるのが、次世代の製造業のトレンドであるインダストリー4.0です。米国では“Smart Manufacturing”、中国では“Intelligent Manufacturing”、ドイツでは“Industrie 4.0”など、名称こそ違いますが、各国で政府や経済界が同様の方向性で製造業のイノベーションを目指しています。もちろん日本もです」(Yee氏)
米国での製造業への回帰、欧州でのインダストリー4.0への注目度上昇など世界で動きが出てきている
オバマ大統領のプロジェクトから指名
米国では官民共同で取り組んでいる「Digital Lab for Manufacturing」(製造業のためのデジタル研究所)に大統領が7000万ドルを拠出すると発表。そこにシーメンスPLMソフトウェアがPLMソフトウェアの唯一のサプライヤーとして指名された。
また、日本ではトヨタが、シーメンスPLMソフトウェアのPLMシステム『Teamcenter』を導入している。このシステムでは設計プロセスやドキュメント、部品表(BOM)、そして戦略企画やプロジェクトのリソースといったPLMに必要となる多種多様な情報を管理するほか、複数の部門・部署をまたぐコラボレーションを強化することが可能となっている。
トヨタでは、自動車の電気・電子システムにライフサイクルを通して適用される機能安全規格ISO 26262への準拠などのため、複数部門でのプロセス標準化を目指しており、Teamcenter導入に至ったとのこと。