IBMはオープンテクノロジにこだわる--「POWER8」はデータ活用とIT基盤をどう変えるのか - (page 2)

齋藤公二 (インサイト)

2014-06-23 16:30

 こうしたLinux対応によるメリットについては、ノベル代表取締役社長の河合哲也氏、レッドハットのグローバルサービス本部プラットフォームソリューション統括部の藤田稜氏が、ビデオでメッセージを寄せた。カノニカルのコーポレート・セールス・エグゼグティブの長島健氏がPower Systems上で動作するJujuを実演して見せた。

 テクノロジに関する詳細な情報については、取締役執行役員 テクニカル・リーダーシップ担当の宇田茂雄氏が「IBM先進テクノロジの集大成がもたらすもの」として講演。同時マルチスレッドや高速メモリアクセスの効果、CAPIの仕組み、オープンテクノロジへの貢献の歴史などを解説した。

宇田茂雄氏
日本IBM 取締役執行役員 テクニカル・リーダーシップ担当 宇田茂雄氏

 宇田氏は、今後の展望として、アナリティクス最適化やビッグデータ最適化、オンチップアクセラレータなどの開発が進む、次の「POWER9」のスケジュールを紹介した。Watsonの応用例として、白血病治療に活用しているテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターや、スマートフォンを使って顧客が資産管理のアドバイスを受けられるサービスを展開するAustralia and New Zealand Bankingのケースを紹介した。

 「CAPIやLinuxのように業界のコラボレーションによって新たな価値が創出されている。IBMは1911年の電動タイプライター開発から100年にわたってテクノロジで世界をリードしてきた。今後もオープンテクノロジでイノベーションが加速させていく」(宇田氏)

ユーザーが支えるPower Systemsとオープンテクノロジ

 Power Systemsの顧客事例としては、みずほ銀行のIT・システム統括第一部 部長 加藤昌彦氏が登壇し、「みずほクラウドにおけるIBM Power Systemsの活用事例」と題して、みずほ銀行が構築したプライベートクラウドの概要と効果を解説した。

加藤昌彦氏
みずほ銀行 IT・システム統括第一部部長 加藤昌彦氏

 みずほ銀行では、グループ企業と共同で利用するプライベートクラウド基盤「みずほクラウド」を構築し、3月から稼働させている。Power Systemsを本番環境向けに3台、開発と災害対策向けに3台採用し、PowerVMの仮想化技術を最大限に活用したものだ。プライベートクラウド採用の理由は「アジリティやコストといったパブリッククラウドの長所を享受しつつ、取り組みを始めた当初まだ十分ではなかったセキュリティと可用性を確保するため」だったという。

 クラウドの基盤は、サーバ基盤群(IAサーバとAIX)、ストレージ基盤群、運用管理基盤群に分けられている。第1世代は、PowerVMで既存30システムを仮想化して集約したもの。ユーザーへの環境構築期間を3~4カ月から2~3カ月にしてコストを約3割圧縮した。第2世代は、2013年度からの3カ年計画で進められている今回の取り組みであり、環境構築期間は3日、コスト約6割減を目指している。具体的には、サーバ台数(IAサーバ含む)を1852台から596台へ削減し、コストについては百数十億円を圧縮する計画だ。

 「これを実現するために、Power Systemsのすべての技術を使い倒してやろうというくらい、さまざまな機能を使っている」という。大きく分けると(1)PowerVM、(2)システムごとにリソースを占有できる“論理パーティショニング(LPAR)”、(3)I/Oの仮想化機能であるVIOS、(4)システムを稼働させたまま仮想サーバを移動する技術「LPM(Live Partition Mobility)」、(5)プロビジョニング(環境をLPARに自動構築する機能)、(6)SANストレージの仮想化プール(リソースプール化、階層化、マルチベンダ接続機能)――の6つになるという。

 コスト削減のためには、技術だけでなく、標準化と自動化の取り組みも並行して進めてきた。具体的には、基盤集約(2009~2010年度)、基盤設計の標準化、クラスタ設計の標準化(ともに2011年度)、遠隔地保管運用の設計標準化、仮想ストレージの接続設定の標準化(ともに2012年度)、運用機能の利用設計標準化(2013年度)、仮想運用の自動構築(2014年度~)だ。

 「最初の基盤集約で基盤構築コストを17%削減した。だが、基盤構築のコストは全体の2~3割で、残りの7割はアプリケーションの開発やテストが占める。仮に基盤構築コストを17%下げても、全体から見ると5~6%の効果しかない。そこで、設計や運用などその他の部分の標準化を進めた。現在、約7割のコストを落とすことができており、仮想運用の自動構築まで進めば、調達コストを除く環境構築費の78%を削減できる見込みだ」

 加藤氏は、クラウド構築の大きな効果として、リソース調達が効率化したことを挙げる。特に「システム部門が圧倒的に変わったと実感できた」のは、5年間使い続けるリソースを調達するのでなく、1年目に必要なリソースだけ調達すればよくなったことだという。終了したシステムのリソースを他業務で再利用したり、開発のフェーズに合わせて必要なリソースを動的に割り当てたりといったメリットも大きかったとした。

 加藤氏は「インフラ基盤コスト圧縮は、情報システム部門だけの知恵と工夫で経営貢献できる分野だ。そのためには、技術に真摯に向き合うこと、ベンダーやソフトハウスには良きパートナーとして向き合うこと、そして、顧客とビジネスの変化に謙虚に向き合うことが大切だ」と訴えた。

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