筆者が受診した歯科診療所では、個人情報を診療所のシステムに入力し、確認して、iPadを戻した後、歯科衛生士に自分の治療歴について説明した。その話を聞きながら、歯科衛生士はコンピュータ画面上にある筆者の新しい患者記録に目を通していた。筆者の歯や歯肉について話し合いながら、歯科衛生士は患者記録のいくつかの項目を更新したり、キーボードから情報を追加したり、筆者が強調した、特に心配な点について確認したりした。筆者が経験したのは、紙をベースにしたシステムよりもはるかに優れた方法だった。iPadを使用している研修医も効率の向上に気づくということを示す研究が、少なくとも1つある。タブレットに1点加点しよう。
デジタルX線
過去30年の歯医者通いのなかで、筆者が慣れていたX線撮影というのは、焦点を絞ったX線照射とフィルムを使って白黒のX線写真を撮影し、歯科医師がそれをバックライトユニットの上にピシャッと貼って説明する、という方法だった。今回、筆者は新しい方法に出会った。写真フィルムの代わりに小型のセンサを使う、デジタルX線撮影である。
提供:Alex Howard
そうした口腔内デジタルセンサは安くはないし、システムにかかる実際の費用は、ハードウェア単体の価格を上回るが、デジタルX線撮影には、従来のシステムより優れている点が数多くある。
歯科衛生士によると、そのデジタルX線撮影法と口腔内センサを合わせて使うことで、X線の放射線量が90%減少するという。この驚くような数字については、後から米保健物理学会を通じて確認することができた。
センサが記録した画像は、化学的な処理を待つこともなく、直ちに診察室のスクリーン上に表示され、診療所のサーバに保存された。ほかの病院に紹介してもらうためにその画像を送る必要があれば、電子的に送信することができる。これは便利だ。
提供:Alex Howard
「笑ってください、(歯の)どっきりカメラですよ」
筆者の頭から最も離れなくなりそうな体験は、診察室の口腔内デジタルカメラによる、思いがけない短いホラー映画の上映だった。筆者はそのデバイスにすぐ「toothcam」というあだ名をつけたが、その後、自分の口の中を見ながら、強い興味と恐怖感を交互に感じた。残念なことに、撮影された映像は、ホラーテレビシリーズ「ウォーキング・デッド」に出てきてもおかしくないほどだった。
提供:Alex Howard
口腔内デジタルカメラで撮影された写真は、デジタルX線写真と一緒に、すぐに診察室の大きなスクリーンに表示され、同時に筆者の患者記録に保存された。歯科医師がやってきたので、その写真を使って、問題のある部分について相談することができた。この写真は、診察の上での有用性よりも、患者に対する動機付けとしての役割のほうが大きいかもしれない。1枚の写真(ここには載せない)を見たおかげで、筆者はしばらくの間、デンタルフロスでの歯間掃除と、歯ブラシでの歯磨き、洗口液の使用を毎日欠かさないつもりでいる。
生活のいたるところにデジタル写真撮影があることの影響を議論し、プライバシーや、薬剤情報の特定、処罰歴を記録する権利、不動産のバーチャルツアー、あるいはデジタル写真の利用を取り巻く倫理的な問題について、これまでの考え方を拡大しようと思えば、さらに何本かコラムを書くことができる。ありがたいことに、診察室にある口腔内デジタルカメラは、こうした状況の多くに比べて倫理的な問題は少なく、有用性が高かった。
次世代のデジタル歯科
この歯科診療所に最も溶け込んでいたテクノロジは、最も地味なテクノロジだったかもしれない。それは、診察室のコンピュータに入っていたスケジュール管理ソフトウェアだ。歯科衛生士はこれを使って、歯科医師と歯科衛生士の両方のスケジュールに合うように筆者の次の予約を入れ、何か疑問があれば連絡できるように歯科医師の電子メールアドレスを筆者に教えることもできた。
ロボットによる歯科治療が実現する見込みはあるものの、親切で、熟練した人間に代わるものが近い将来に登場する気配はまだない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。