「情報通信白書」最新版を読む

「情報通信白書」最新版に見るICTの現在(前編)--世界で戦うには何が必要か - (page 3)

田島逸郎

2014-10-03 07:00

国内企業がICTでうまく戦うには

 世界中でICTが普及する中で、日本では、企業におけるICTの活用が比較的進んでいない現状にある。ICTは既にほぼすべての業種に良い影響を及ぼす可能性を持っており、活用による成長や組織の改善が見込まれる。

 一方、世界市場においては、プラットフォームからインフラに至るまで全領域で急激な変化が起こっており、それに対応しないとICT企業の海外展開は難しくなりつつある。「情報通信白書」では詳細な要因分析が行われており、ここではその一部を取り上げる。

業種間でバラツキ--伸び代があるICT

 ICTが生産性を高めるという実証研究が既に多く見られるが、日本ではICTの設備投資に占める割合は低い。「ICTによる経済成長加速に向けた課題と解決方法に関する調査研究」では、国内での各業種について行ったアンケート調査により、ICT化が進んでいる部門と進んでいない部門の差が大きいことを明らかにしている。

 まず、ICT投資の目的では、売上向上よりコスト削減が重視されており、社外よりも社内での効果を目的としていることが多い。実際の利用、活用では、全体として製造業や情報通信業で多く見られるが、農林水産業、不動産業、運輸業で低い傾向にある。例外的に、GPSなどのモバイルソリューションの活用については運輸業が多い。ICTの利活用と売り上げ、利益の関係については、前述の利活用が多い業種で売り上げが増加したことが多い傾向にある。


「ICT投資の目的と効果」出典:「平成26年版情報通信白書」(総務省)
原出典:総務省「ICTによる経済成長加速に向けた課題と解決方法に関する調査研究」(平成26年)

 ICTと組織改革、業務改革は密接に関連している。組織改革については、社内業務のペーパーレス化やナレッジの共有が全体的に多く見られ、人材面への対応や投資については製造業、商業、金融・保険業、情報通信業で多く見られる。ICT投資や利活用の効果測定についても、製造業、金融・保険業、情報通信業で多い。組織改革、業務改革への取り組みと売り上げ、利益についても、売り上げや利益の増加した群で取り組んでいる割合が多い。

 ICTや組織改革などの取り組みが経営に与える影響として、トップの意思決定の正確性や迅速性の向上、新規顧客の開拓、投資収益率の向上などの経営改善効果をスコア化して分析している。ICT化の進展に加えて、組織改革・人的資本の取り組み、 最高情報責任者(CIO)の設置、効果測定といった要素が経営改善効果をより大きくすることが示唆されている。

 このようにICTの経営改善効果が明らかになっているにも関わらず、ICT投資は伸びていない。これを促進した場合の経済モデル(生産関数モデル)を用いたシミュレーションの結果、情報資本ストックが3.2%から6.8%に増加することで、日本の実質GDP成長率が0.5%向上するという予測がされている。つまり、ICT以外よりもICTに投資した方が経済成長が促進される。

 これに向けて、政府では昨年決定した「世界最先端IT国家創造宣言」を洗練させている。また、総務省では「スマート・ジャパンICT戦略」を推進しており、どちらも地域や社会課題の解決とICTを結びつけるような内容になっている。

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