Amazonが先ごろ発表した第3四半期(7~9月)の決算で、夏に発売したスマートフォン「Fire Phone」の不良在庫などに関わる損金を1億7000万ドルも引き当てたことが、いくつかの米媒体でニュースになっていた。
「Fire Phone」が発表当初から評価もいまひとつで、売れ行き不振を挽回するために値段の切り下げもなされていたことを思うと、この損金計上自体はあまり意外なことでもないかもしれない。
価格値下げについては、AT&Tとの2年契約で当初199ドルだったものを発売からわずか2が月ほどで99セントに変更していた。
本体価格をタダにし、しかもAmazon Primeサービス(米では年間99ドル)をつけても大量に売れ残ったというから、この売り上げ不振にはかなりの深刻さが感じられる。
過去14年間で最大の赤字を計上
このところ「投資モード全開」のAmazonは、第3四半期の損失額があわせて4億3700万ドルと過去14年間で最大の赤字額を記録。これが1株あたり95セントとアナリスト予想の74セントを大幅に上回り、さらに前年比20%ほど増加した売上高(205億8000万ドル)もアナリスト予想に届かず、今期の業績予想もアナリストのそれを下回りそうな見通しとなって、株価がいっきに10%近くも下落したという(今年に入っての下落率は30%近くに達している)。
利益のすべてを(同社の大好きな)「長期的な視点からの先行投資」にまわし、株価の値上がりをあてにしてきたこれまでのやり方が、一時的にせよ見直しを迫られているのかもしれない。いまのAmazonにとって難しいのは、この「先行投資」のうち、「どれが守りでどれが攻めなのか」といったあたりの区別や優先順位付がつけづらくなっていることだろうか。
各国での物流拠点の整備、拡張やインドへの20億ドル投資、米国内でGoogleなどとの競争がエスカレートしつつある即日配達(Amazon Fresh)を強化するための資本投下などは、小売・物流事業者としての「本業」に比較的近い感じがして理解が得られやすいかもしれない。
Fire Phoneの損金が赤字額の約4割弱--スマホ開発への評価
それに対して、Netflixとの競争を見据えたオリジナル映像コンテンツの製作や、Apple、Samsungらに正面から挑むことを余儀なくされるスマートフォン開発・販売などは、やはりどうしても歩が悪く、投資家連中の間での評判も芳しくないようだ。
スマートフォンという「ユーザーとの接点」を他社に握られたくない。そういうAmazon側の考えは外部の人間にも比較的分かりやすい(iOSのKindleアプリからはいまだにコンテンツを直接買えないことを思いだそう)。
ただ、だからといって「iPhone」や「Galaxy S」などと競合する価格帯のもの、Jeff Bezosの「ツルの一声」で搭載が決まったとされる疑似3D表示や「Firefly」とよばれる商品データベースと連動する画像認識機能などを備えたものをはたして出す必要があったのか……。今回の損金引き当てで、その答えが明らかになったと言えそうだ(Fire Phoneの損金が赤字額の約4割弱を占めているので、それがなければ損失額はアナリスト予想の範囲に充分収まったことはあきらか)。