日産自動車は現在、グローバル市場シェア8%と、売上高営業利益率8%を2016年度末までに実現する中期経営計画「日産パワー88」を2011年度から実行している。IT部門でも中期計画「VITESSE」に取り組んでいる。日産の最高情報責任者(CIO)でありグローバルコーポレート IS/IT(情報システム部門)を統括する行徳セルソ氏に、同社の取り組み、注力している点などについて話を聞いた。
--IT部門として特に注力していることは。
日産自動車 グローバルコーポレート IS/ITアライアンスグローバルバイスプレジデント 常務執行役員 CIO 行徳セルソ氏
Renaultと日産のアライアンスです。特に、1月に発表された「研究・開発」「購買」「生産・物流」「人事」などの4つの機能を2社で統合し、Renaultと日産の組織と、それを支えるシステムをどのように共通化していくかに注力しています。それに年々ハードルが高くなっている情報セキュリティ。この点は投資も進めています。また、人材育成も大事だと思っています。
--アライアンスとセキュリティ、人材育成の3つがありましたが、まずアライアンスにおいて、2つの会社で目標をすりあわせて実現していくために具体的にしていることは。
基本的にはアライアンスの担当副社長がいて、Renaultと日産の各VP、それを束ね商品やプログラム、デザイン、エンジニアリング、品質などを統括するCCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)がそれぞれにいます。私は基本的にマネジメント担当ですが、ボトムアップとトップダウンを同時に求めて調整していきます。ただ、現場にも課題がありますので、何から着手するのか優先順位をつけて決めていくことが大事だと思っています。
各会社、各カンパニーの文化の違いを認識して、共通部分を共存させることを意識しています。目的は一緒でも、やり方は会社によって違いますので、各社のいい面と強みをうまく合わせる。しかも、単に一緒にするだけでなく、それにより1+1を3にする、それぞれのパフォーマンスが80%だったら、全体として100%の力を出せるようにすることを目的としています。
Renaultと日産、またそれぞれのカンパニーがどう運用されているかを理解し、ちゃんと話を聞くことで交通整理できます。基本的にRenaultも日産もフレームは一緒です。それを同じフレームワークで両方のビジネスプランをまとめて運用し、PDCAを回している状況です。VITESSEは共通のIT計画ですが、“One PLM”と呼ばれる製品ライフサイクル管理の計画では、2社をアライアンスレベルで情報連携やプロセスを統合し、ミスの抑制とともに稼働を効率化し、呼ばれる製品ライフサイクル管理の確立を目指します。業務プロセスを標準化して統合し、データ構造と製品を共通化、システム統合による情報連携を推進しています。
一番大事なのは同じKPIで測ることでパフォーマンスを評価していくことです。KPIには10種類ほどの指標がありますが、それぞれの違いはプロセスだと思いますので、それを比較することで、結果としてプロセスの良さがわかります。その良さをお互いのプロセスに組み込んでいくわけです。