こういった分析はデータサイエンティストのセンスもあります。日産のデータサイエンティストは現在、シリコンバレーに設立したR&Dセンターに3人ほどいます。人数少なめですが、まだビッグデータを実際分析する人のリソースはそれほど多く必要ないためです。シリコンバレーに人材を置いているのは、(ビッグデータのプレイヤーやデータサイエンティストが多く集まる)刺激的な環境を用意することが仕事へどのように影響するか見たいからです。まだ試みは始まったばかりですが、今後は分析結果を業務に回し、業務がプラスアルファしていけるような活用方法を考えています。
--シリコンバレーで、ほかに取り組んでいることは。
例えば、開発者がコラボレーション して、軽いプロトコルを試すといった技術的なことをやっています。基本的に自由に開発してもらっていますが、テーマを設定してもらい、定期的な成果報告を義務づけています。成果をどう活かすかは別ですが、ちゃんとしたアウトプットを要求しています。
--2020年までに日産の目指している姿は。
IT部門としては、コストの面ではオペレーショナルエクセレントがこれからの課題です。新しい技術を取り込んだ解決策をできるだけ早く提供する。業務のニーズをしっかり理解して、それに最適なシステムを提供する。新しい技術を使って付加価値、リターンを実現できるようになっていたいですね。それが理想のITだと思っています。
--技術的に革新し続けながら利益も生んでいくのは難しそうだ。
それはデータの整理ができていないからだと思います。何かをしようとするときには、インターフェースを作る必要があります。その基盤をしっかり標準化してシンプルにすれば、その上で新しい取り組みができます。多くの企業は基盤とデータの整理しっかりできていないので、足を引っ張り合ってしまうんですね。
“System of Record”という考え方で基幹システムのファウンデーションができていれば、新しいことがどんどんできるはずです。そこがまだまだな企業が多いので、改善の余地があると思います。世界中で仕事をして思うのは、日本人は今まで、特定の相手と一緒に長く仕事をしていたので(属人的で)、知見を紙に落とすという文化がないのです。これでは、いろいろな知識がデータとしてしっかり残っていかないですよね。まずはデータをしっかり整理することが重要だと思います。