Tim Cookの「プライバシーは基本的人権」発言
ユーザーのプライバシー保護について以前に自ら書簡を公開していたApple最高経営責任者(CEO)のTim Cookは、先週末に滞在中のロンドンで「プライバシー(保護)は基本的人権に関わること」「犯罪対策やテロ対策などを理由に監視体制を強化しようとする政府などの要求に屈してはならない」などと発言していた。この発言を含む英Telegraphとのインタビューについては「Apple Watchに自動車のドアキー(リモコンキー)機能が搭載される」といった話題にもっぱら注目が集まっていたようだが、実はプライバシーのような面倒な話題にもしっかり触れられていた。
Telegraph側からこの質問が出てきた背景には、今年初めに英首相David Cameronが「今年春の総選挙で保守党が勝利したら、インターネットを介してやりとりされるすべての通信を(必要に応じて)警察や諜報機関がみられるようにする(そういう法案を提出する)」などと発言し、また米大統領Barak Obamaからもそれを擁護するコメントが出されていたといった動きを受けたもの(この関連の動きについてはここでは説明を割愛させていただく)。
Cookが何十年間も秘密を抱えながら生きてきたことを考えあわせると、「プライバシーは基本的人権のひとつ」とという発言は、「一経営者の立場」を超えたものとも感じられる(同氏がゲイであることを認めたのはつい昨年のこと)。この直前に、CookはイスラエルにあるWorld Holocaust Museumにも立ち寄っていたそうなので、あるいはナチスに迫害されたユダヤ人(場合によっては身元を隠さななくてはならなかった)のことも念頭にあったかもしれない。
Cookはここ1年ほど「正しいことだからやる」「利益を最優先して動くわけではない」といった発言をすることが目立っている。そんなCookにとって、プライバシー保護というのは、商売のことを考えて簡単に妥協するわけにはいかないものかもしれない…。Cookの書簡やTouch IDなどの情報については下記のページをそれぞれご覧いただきたい。
米中IT保護貿易摩擦
前述のCookの発言に関するニュースと相前後して、中国政府が国内でビジネスをするITベンダーに対し、暗号(解除)キーを引き渡させたり、端末などの装置に「バックドア」を設けさせたりといった内容を含むテロ対策法案を準備中で、シリコンバレーの企業などがそれに戦々恐々としている、といったニュースが流れていた。週明けには、この件について、Obamaが強い懸念を示したとする話も報じられていた(下掲の動画は、Obamaが懸念を表明しているReutersのインタビュー)
この話を伝えたReuters記事には、中国側では「国内でのテロ対策や治安維持のためにこういう措置が必要」との考えで――実際に西部では2年ほど前からイスラム系分離派による騒乱などで数百人の死傷者が出ているそうだ。米国側では「テロ対策云々よりもむしろ中国市場から海外企業を閉め出そうとする動きでは」といった懸念の声が上がっているなどとある。また「法案が成立した場合には、MicrosoftからAppleまでシリコンバレーのいろんな企業が影響を受けそう」といった指摘もある。