最高のITへ協力:エリソン氏と富士通、NEC、NTTデータ、CTCの社長が対談 - (page 2)

大河原克行

2015-04-10 14:00

IoTでJavaは価値を創出できる

 質疑応答で、富士通の山本氏はEllison氏に対して「SPARCやSolarisをIaaSの世界でどう展開していくのか」と質問。Ellison氏はこう答えた。

 「電気も石油もコモディティ化しながらも、そこから利益を得ることができるようになっている。ここでの条件は低コストであることだ。信頼性も必要である。将来へのシステム移行が始まる中でインフラをもっと最速化するためには、SPARCの開発をさらに進め、InfiniBandを活用。統合を加速するといった取り組みも必要だ。高度なフラッシュストレージを駆使し、インフラなどを駆使すれば可能であり、コモディティ化にも対応できる。クラウドの世界では、どのプロセッサを使っているのかを聞く人は誰もいない。われわれ自身でさまざまな技術を織り交ぜて、いち早くサービスを提供でき、イノベーションを起こせるだろう。クラウドの世界では、数を多く持ち、大きなものが生き残るだろう」

 CTCの菊池氏は「日本でのデータセンターはどういう形で展開していくのか」と質問。Ellison氏は「日本では、パートナーと密に連携してきた。これはグローバルの戦略とは異なる。私は日本市場がほかの国とは違うことを理解している」との見方を示した。

 「日本には、Oracleが直接運用するデータセンターは作るが、多くのユーザー企業は、パートナーのデータセンターを活用し、パートナーからサービスを受けることになるだろう。ユーザー企業もそれを求めている。この関係は変わらない。日本では複数のデータセンターを設けるが、それは直接運営することが必要な場合もあると考えているためである。今回の来日は、日本でのデータセンター設置に向けたプロセスを確認する意味もある」(Ellison氏)

 NECの遠藤氏は、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)などの新たな世界でOracleが考える環境などを聞いた。これに対して「なぜOracleがSun Microsystemsを買収したのか。優秀なエンジニアや技術を持っていたことが最大の要因である。特にJavaはIoTで価値を創出できる技術」とEllison氏は回答した。

 「農業でもIoTを活用して、土壌や日射状況をモニタリングして、歩留まりの向上につなげることができる。ここにもJavaが生かせる。センサにJavaを活用していくことになる。だが、IoT時代では、安いコストで多くの情報を収集しなければならない。エンドトゥエンドでセキュアな環境も求められる。IoT時代には、これまで以上にセキュリティの問題が重視されるだろう。Oracleはこれまではコスト効率について訴求してきたが、これからのOracleはセキュリティが最も重要な課題になると考えている」(Ellison氏)

 NTTデータの岩本氏は、「エッジコンピューティングをどう捉えているか」「非構造化データに対するRDBMSをどう考えるか」という2つの質問を投げた。Ellison氏は「エッジコンピューティングはこれから重要になってくる。そして、大きなビジネスになるだろう。サーバに情報を集めるクラウドを航空管制とすれば、飛行機のパイロットはエッジコンピューティングのようなもの」と話して、こう続けた。

 「飛行機には数多くのセンサが搭載されており、それらの情報をもとにクラウドが言っていることが間違っていると感じたときには、航空管制を無視して、適切な回避行動を取るといったことも必要だろう。自動走行車の実現にも、エッジコンピューティングは必要であり、将来は、クラウドとエッジコンピューティングの組み合わせが求められる」(Ellison氏)

 さらにEllison氏は「Oracleは、非構造化データを処理できる能力をデータベース上に持っている。SQLへのインターフェースをHadoopの上に置くことで非構造化データの活用については解決できている。だが、リアルタイム性がないので、そこに課題がある。非構造化データの一部と、構造化データの一部を組み合わせて回答を導き出す場合などの作業にも最適化していく必要がある」と語った。

 日本オラクルの杉原氏は日本企業へのメッセージを求め、Ellison氏は「初めて日本を訪れてから45年ほどを経過しているが、その間、日本は確実に変わっている。たとえば、スタートアップ企業の数は大幅に増えた。イノベーションは、成熟企業とスタートアップ企業とのバランスが必要である。イノベーションに向けて、お互いが力を貸しあいながら、成長していく必要がある」とした。

 日本オラクルが今年30周年を迎えることに触れて、Ellison氏は「日本オラクルを設立する前に最初に来日したのは富士通と仕事をするため。当時はAmdahlでIBM互換機を作るために日本にきた。その後、東京に何年か住み、日立製作所と仕事をし、日立市までJRで通勤した。漢字表記ばかりで苦労した。最初は遅刻してしまい、日本の企業では大変な失態をした。そうした経験もあった日本にオラクルが進出しようと考えたのは自然だった」といったエピソードも披露した。

 最後に杉原氏は「今回登壇したG5によって、日本発で世界の顧客に最高のICTを提供するために相互協力する枠組みに合意したいと考えている。中身はこれから決めるが今後、ワーキンググループを設置して、検討していきたい」として講演を締め括った。

(左から)日本オラクル杉原氏、CTCの菊池哲氏、NTTデータの岩本敏男氏、Ellison氏、NECの遠藤信博氏、富士通の山本正已氏
(左から)日本オラクル杉原氏、CTCの菊池哲氏、NTTデータの岩本敏男氏、Ellison氏、NECの遠藤信博氏、富士通の山本正已氏

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]