業界単位でクラウドを構築するという「業界クラウド(インダストリークラウド)」の台頭によって、大手のクラウドベンダーにプレッシャーがかけられるとともに、企業は自社のクラウド戦略に沿ったパートナーを選択できるようになる。
クラウドコンピューティング市場が拡大の一途をたどるなか、ほとんどの企業は「Amazon Web Services」(AWS)や「Google Cloud Platform」「Microsoft Azure」といった超大型のプロバイダーや、Salesforce.comやWorkdayのような急成長中のSaaS企業に注目しているが、業界クラウドの世界でも多くのイノベーションが起こっている。
実際、レガシーインフラや、数十年前から存在している人気のあるソフトウェアプロバイダーに頼るよりも、業界に特化した新進気鋭のプロバイダーと手を結んだ方がよい場合もあるのだ。
クラウドの新たな局面に追随していくための学習など、自分から進んで行いたくはないと思う心情は理解できる。しかし、業界クラウドの台頭について真面目に考えておくべき理由がある。なお、一部の人々は業界クラウドをバーティカルクラウドと表現している。クラウドベースの人事・会計ソリューションを展開するWorkdayの運営責任者Mike Stankey氏はこれらのプロバイダーのことを、オペレーショナルシステムクラウドの専門家だと評している。
こういったプロバイダーはさまざまな名前で呼ばれているが、本記事では「業界クラウドプロバイダー」と呼んでおり、そのクラウドの構成要素はほぼ同じとなっている。彼らはすべて、以下のような特長を備えている。
- 保険業界や製造業界、金融サービス業界、ヘルスケア業界、ライフサイエンス業界などの専門業界に注力している。
- 特定分野における専門的スキルを備えている。
- 長年にわたって築き上げられてきたレガシーインフラを置き換えるという、顧客の切なるニーズに応えるソリューションを用意している。
- 水平展開を指向し、各業界に進出するためにカスタマイズ性や買収という戦略を採っているOracleやSAPのようなソフトウェアベンダーを上回るフットワークの軽さを備えている。

提供:Junko Kimura/Getty Images(2005)