少し離れたところから全体像を把握するには、Stankey氏の提示した視点が役立つはずだ。
- ITクラウド:ガバナンスやインフラ、プラットフォームを網羅する。MicrosoftやGoogle、IBM、AWSなどのクラウドが挙げられる。
- コラボレーションクラウド:コラボレーションに適している。MicrosoftやGoogleなどのクラウドが挙げられる(この他にも考えられるが、生産性ツールとドキュメント管理が必要となる)。
- マーケティングおよびセールスクラウド:マーケティングやセールスに特化している。Salesforce.comやOracle、SAP、その他多数のクラウドが挙げられる。
- アドミンクラウド:財務や人事、ERPといった管理業務に適している。WorkdayやNetSuite、Oracle、SAPなどのクラウドが挙げられる。
- オペレーショナルシステムクラウド:基幹系業務を対象としている。保険分野のGuidewire Softwareや医療分野のAthenahealth、製造分野のRootstock Softwareなどのクラウドが挙げられる。
箇条書きの最後の項目に出てきた企業名に見覚えがない人も多いかもしれない。それはあなただけではない。
こういった見慣れない企業について考察してみたい。
- Rootstock:この企業は製造業向けのオンデマンドERPシステムを提供している。同社はしばしばSalesforce.comやFinancialForce.comの製品と組み合わせることで製造業向けにSAP製品の代替を提供している。2008年に設立されたRootstockは、プラットフォームとしてSalesforce.comを選択した。同社の製品はSalesforce.comの「AppExchange」上から利用可能となっている。自社のERPシステムを一気に軌道に乗せたいというのであれば、Salesforce.comは悪い選択ではない。
- Athenahealth:この企業はクラウド内に電子的な医療記録を保存するサービスを提供している。また同社は、Allscripts Healthcare Solutionsやヘルスケア市場のその他の主要企業と同様に、オンプレミスのソフトウェアも提供している。しかし、Athenahealthのクラウド製品の人気が高まりを見せるなか同社は、顧客ベースの中核に、製品をサービスとして(as-a-service)購入するコンシューマーを据えられる状況にある。それには他の業界クラウドプロバイダーとの戦略的な連携が鍵となる。
- Navatar Group:この企業は金融サービス業界向けにCRMやコンテンツ管理、金融情報をまとめて取り扱えるクラウド製品を提供している。資産管理分野のほか、投資銀行分野にも注力することでNavatarは金融サービス企業に売り込みをかけている。Rootstockと同様に、NavatarはSalesforce.comの重要パートナーだ。NavatarはSalesforce.comやBoxのプラットフォーム上でソフトウェアを構築してきている。
- Veeva Systems:この企業はライフサイエンスとそれに関するアカウントプランニングに注力している。Veevaのクラウドツールは研究開発の管理から、営業担当者やネットワーク内の顧客の管理まですべてを網羅している。
- Guidewire:Guidewireも保険市場に注力している業界クラウド企業だ。金融分野を主力とするGuidewireは、主に保険会社向けのオンプレミスソフトウェアを提供している。しかし、Guidewireは企業の業務を扱うだけでなく、同業者同士をつなぐためのクラウドアプリのネットワーク「Guidewire Live」も立ち上げている。株式を公開している同社の2015会計年度通期(7月31日締め)の売上高は約3億7700万ドルと見込まれている。