ICT産業の30年
一方で、ICTを支えるICT産業も時期に応じて変化を続けてきた。これも10年ごとに分けることができ、通信事業者が垂直統合で事業を展開していた時代から、1995年以降のインターネット普及期のコンテンツ事業者やソフトウェアベンダが登場した時代、2005年以降のインフラを「プラットフォーム」や「クラウド」事業者が担う時代へと、概ねレイヤごとに分離してきた。
一方で、Apple、Amazonのような複数のレイヤにまたがる事業を展開する企業もあり、単純に変化してきたとはいえない。
ICT産業の構造変化(レイヤーとプレイヤー)出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)
ICTを支えるストレージ、デバイスなどの単価は急激に減少し、「コモディティ化」が進んでいる。その上で、さまざまな部品をモジュール化した上で組み立てるという分業が成立し、国際的に各国の強みを活かした産業が発展している。
ICT産業の収益性については、プラットフォームレイヤが最も売上高が伸びている一方で、コンテンツレイヤは伸び悩んでいる。国際的な観点では、日本のICT産業はデバイス製造と通信の売上高が特に高く、企業の新陳代謝も多く行われず設立年数が長い企業に依存している。
その中で、日本のデバイス製造レイヤは伸び悩んでいる。このような状況で、各ICT企業はプラットフォーム(NEC)、総合的なソリューション(富士通)、社会イノベーション(日立製作所)などさまざまな戦略を導入している。
各分野でのICTの利活用の普及
次に、2000年以降ICTの利活用の発展をデータによって概観する。日常生活、企業、公共と全ての領域で、ICTは急激にそのユーザーと利活用の幅を増やしてきた。その経緯と現在に連なる動きを見ていく。
まず、日常生活においては、従来テレビ、新聞などが主流だった情報収集の手段において、ICTは急激にそのシェアを伸ばしてきた。2000年から2012年にかけてニュースの情報源としては1.7パーセントから29.6パーセントへ、信頼できる情報源としても0.4パーセントから14.7パーセントへと増加している。
地図の利用においても、2013年以降は紙地図の利用率が30パーセント弱であるが、PC用地図が6割を超えており、スマートフォン用地図も2015年に40パーセントを超えた。飲食店情報についてはPCのサイトが8割以上である。学生の就職活動でも、企業のホームページや就職関連サイトのシェアが増加している。