遠隔地のモノや空間などの状態を認識、識別するIoT(Internet of Things)への関心が一段と高まっている。生産性の向上に加えて、新しいビジネスの創出への期待感からだろう。そんなIoT市場に成長機会を見出そうとしているのが、小型サーバを展開するぷらっとホームだ。自社開発したIoT向けサーバを使った先進的な事例を年内に作り上げて、ビジネス変革の可能性を提案する考えだ。
小型サーバを展開するぷらっとホーム
1993年に創業したぷらっとホームは、Linuxの載るPC/AT互換機を輸入販売する一方、Linuxが稼働するコンピュータの開発を始めた。パソコン通信やパケット通信など通信サービスに必要なマルチタスク、マルチユーザーのOSであるUNIX互換のLinuxに着目したからで、96年には自社ブランドのLinuxマシンを売り出した。主にISP(インターネットサービスプロバイダー)や通信事業者向けに、最盛期の2001年、2002年の年間販売台数は数万に達したという。
だが、サーバの需要が通信の基本サービスからインターネットインフラ上に載るECサービスなどへと移り、汎用サーバが爆発的に売れるようになってきた。「デルやHPなどが得意とする用途で、ぷらっとホームが手がけられる領域ではない」(鈴木友康社長)。大量生産、低価格化で勝負する市場ではないということだろう。
そうした中で、2000年にPowerPCを搭載した小型サーバを発売。地震計測や気象観測などデータがリアルタイムに大量発生する用途などを狙ったもので、サーバをより小型化し、かつ発熱を抑えるためにモバイル機器に使われているARM、Atomを採用した超小型サーバも開発する。数百、数千のセンサなどとクラウドをつなぐために、速い通信速度、高いI/Oの処理能力、さらに通信状態の常時監視などの機能を備えるものが求められてきたからだ。
しかも、つながるモノが多種多様になると、いろんな通信手段や接続手段を用意する必要がある。2014年9月に発表した手のひらサイズの超小型サーバは3G通信機能に加えて、Wi-FiやBluetoothなどの無線通信、RS-232Cなど多数の有線インターフェイスとの接続を可能にした。簡単に言えば、センサとクラウドをつなぐIoTゲートウエイの役割を担うもの。閉じた世界の中からデータを収集するのではなく、どこからでも自由にデータを集めるIoT向けに開発した。「(IoTサーバに)9割のモノがつながる」(鈴木社長)。
ぷらっとホームには、こうしたIoT向けなどの小型サーバを手がける上での強みがあるという。1つは、コンピュータを開発する力があること。日本の有力ITベンダーの多くがコンピュータを開発、販売しているはずだが、鈴木社長の目にはアセンブリメーカーやソリューションプロバイダーに見えている。PCやスマートフォーンから撤退したことがそれを証明するという。「コンピュータの中身は、ハードが半分、ソフトが半分。そのソフトのバージョンアップも保証しなければならない。独自のコンピュータをつくるという経営の意思もいる」。
2つ目は、PowerPCやAtomなど複数のプロセッサを採用したコンピュータの開発実績があること。Linuxについては、20年以上の経験がある。農業や病院などさまざまな分野での利用実績も積んできた。つまり、つなぐという実績が数多くあるということ。そんな経験、実績をベースに開発したのが、先のIoTサーバである。