「情報通信白書」に見る情報通信政策の過去、現在(4) --社会全体のICT化と未来 - (page 3)

田島逸郎

2015-10-29 07:30

経済構造に変化を起こすIoTや起業

 現在、さまざまな「モノ」がセンサや無線通信を通じてインターネットにつながるIoT(Internet of Things)が注目されている。IoTデバイスは世界的に2013年の158億個から2020年の530億個まで増加すると予測されており、特に車、家電、産業設備などについては爆発的な増加が予測される。その背景にはセンサーなどの部品のコモディティ化が進んでおり、社会課題の増加というニーズもそれを後押ししている。

 IoTの適用される分野の代表的なものは、産業、社会インフラ、個人である。まず産業分野では、個別の製造条件や機器のログなどを基にさらに効率的な生産につなげることができる。社会インフラについては、エネルギー、交通、物流などの分野で、設備投資やメンテナンスなどの問題を解決できる。個人向けについては、先に述べたウェアラブルデバイスなどが先駆的な事例で、この他にもさまざまな種類のものが登場すると見込まれる。IoTの利活用の促進に向けては、コンソーシアムや業界団体がユースケースごと、技術分野ごとに議論を進めている。


IoTの適用分野の例 出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)

 起業プロセスにも変化が生じている。まず、起業段階から海外展開を目指す「ボーン・グローバル」な企業が増えており、これらはベンチャー・中小企業、ハイテク・スタートアップ・グローバル企業の3つの要素を併せ持っていると言える。ボーン・グローバル企業の成長においては、ICTが重要な役割を果たしており、コミュニケーションからサプライチェーンマネジメントなどあらゆる側面でICTを活用している。


ICT分野におけるボーン・グローバル企業の例 出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)

 モノ作りにおいては、3Dプリンタなどのデジタル工作(デジタルファブリケーション)機械が個人でも手に入るようになったことが挙げられる。デジタルファブリケーションは、人工骨などの従来製造が難しかったものから、より規模の大きな住宅などにも活用が始まっている。また、需要に応じて(オンデマンド)その場で(オンサイト)作ることができる特徴を持つ。これにより、少数生産・パーソナライゼーションを低コストで実現できる。


デジタルファブリケータの種類 出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)

 ビッグデータについての現状をまとめる。データ流通量については順調に増加しており、9年間では動画・映像視聴ログ、センサデータ、画像診断データなどの流通が増えている。業種では運輸業、不動産業、建設業で大きく増加しているが、映像データがこれらの業種の流通量を牽引していると考えている。

 活用状況の調査では、まず活用目的では経営管理、業務の効率化、商品・サービスの品質向上、顧客や市場の調査・分析などが多い。利用しているデータの種類については、顧客データ、経営データなどが多く、センサーデータの活用はまだ少ない。分析の手法についてはExcelなどの基本的な手法が多く、Hadoopなどのビッグデータ向けの処理基盤を利用している例は非常に少ないが、これらを活用した方が効果が上がった割合が高い。分析の人材については専門のデータ分析担当者が行う割合は少ないが、効果が得られた割合としては専門の担当者が行ったほうが多い。


データ流通量の推移(メディア別) 出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)

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