注目されるのはVMwareの今後だ。業界にはさまざまな憶測があるが、Dell氏はイベント中、「独立性を維持する」と述べた。Haas氏とSwainson氏もこれを繰り返し、「異機種混在(ヘテロジニアス)環境のサポートという価値提案を失いたくない。このモデルを継続し、独立して運営されるだろう」(Haas氏)、「EMCのポートフォリオの中で(ソフトウェアから見て)VMwareが宝であることは間違いない。われわれはVMwareを独立した形にするつもりだ」(Swainson氏)と述べている。
Haas氏はこれを干渉することのない「ハンズオフアプローチ」としたが、一方で買収時、EMCの最高経営責任者(CEO)、Joe Tucci氏はDellとVMwareのシナジー効果を今後数年間で10億ドル規模と予想している。どうやってハンズオフアプローチによりVMwareと既存のパートナーとの関係を維持しつつ、Dellとのシナジー効果を出すのか。
Haas氏は例として「Dellのすべてのサーバ製品にVMwareを組み込むことでVMware技術の拡大につながる」と述べる。また、同社がMicrosoftと展開する「Microsoft Cloud System Platform Powered by Dell」のVMware版の可能性もあるだろうとHaas氏は言う。「VMwareを普及させるために、さまざまなプロジェクト、イニシアティブの可能性がある」(Haas氏)。

Dell ソフトウェア事業部プレジデントのJohn Swainson氏
ソフトウェア側の影響
ソフトウェア側ではどうか。Dellの管理ソフトウェアとの統合が進むのだろうか。――Swainson氏は「話し合いがはじまったところ。どのようにポートフォリオを合理化、正当化し、ロードマップを作っていくのかを考える。顧客にとって正しい方法を見極めたい」とコメントするにとどめた。
Swainson氏はDellのソフトウェアでの強化分野をデータアクセス、ネットワークセキュリティを中心とした「セキュリティ」、ビックデータなどの情報管理、分析、移動などを含む「データ管理」、レガシーからのモダン化ツールなどの「システム管理」の3つとし、EMCの持つソフトウェア資産は「これら3つにフィットする」と語る。
しかし、複雑な点として「EMCの取ってきたフェデレーションモデルはわれわれとは異なる」と認める。例えばEMCはVMwareでは約80%、Pivotalでは約90%、RSAでは100%の株式を所有しつつ、各社のトップの下で自律的な運営を行ってきた。
さらには、エンタープライズ事業に組み込まれた他のソフトウェア事業がある。このようなことから、「今後6~9カ月をかけて統合に向けて理解を深め、その後具体的な作業を行うことになるというのが現在の予想だ。1年はかかるだろう」とSwainson氏は述べた。「スタンドアロンで展開するモデルも探っている。何が戦略的になるのかを見極めているところだ」とも述べた。
今回のEMC買収について、パブリッククラウドに絡めて見る向きは多かった。Dellは2013年、自社でパブリッククラウドを開始後すぐに戦略変更、ここではパートナー戦略をとり、自社はパブリッククラウド事業者と競合しないという姿勢を打ち出している。
パブリッククラウドをサービスとして持たない点について、「われわれは全てのクラウド事業者にインフラを提供しており、顧客と競合することより顧客の成功を支援する方がよいと考えている」とHaas氏は意に介さない。
それどころか、Dell Worldの会期中に競合Hewlett-Packard(HP)が撤退することを発表したこともあり、「プロプライエタリのクラウドソリューションは成功しない。(HPの撤退は)誰もが予想していたことだ」と述べる。