――日本では、IT部門とビジネス部門がアジャイルのイメージで協力し合う、「Dev/Ops」にさらにビジネス部門の責任者が加わる「Biz/Dev/Ops」まで見据えた連携の機運はあまりないのでは。
確かに、欧米に比べて日本はまだ変革は初期段階かもしれない。ビジネス部門と開発、運用部門との協調は、最高経営者(CEO)、最高情報責任者(CIO)レベルの強力なリーダーシップも必要となるだろう。また、変革の実現に向けては、SIやMSPパートナーと企業側の協調もより強く求められることになる。
しかし、日本企業も積極的にグローバルビジネスを推進しているのであるから、このデジタル変革という変革の波にはあらがえない。早晩早晩取り組む必要が出てくるだろう。その際に、AppDynamicsは日本企業の変革を支援する存在でありたいと願っている。
――CIOの役割について、日本ではまだまだ既存の業務を下支えし、業務上のデータを格納・管理するシステムの概念「System of Record(SoR)」に注力をしていて、企業の収益増・競争優位に直結した概念「System of Engagement(SoE)」まで目を向けるまでに至っていないと思うが、それについてどう考えるか。
企業内での、CIOの役割は大きく変化してきていると考える。従来型の企業プロセスというのは、ウォーターフォール型だった。製品を開発し、マーケティングが市場メッセージを考えて、営業部門に引き渡してそれを販売する。現在のプロセスは、それらを包括的に考えて、一貫してまた同時並行的に進めていくことが望まれている。より迅速に市場に送り出し、より効率的に販売をし、顧客満足度を高めていかなければならない。
そう考えた時に、これまでのCIOはSoRをいかに安定的に運用するかに注力をしていたが、これからは、顧客の意図を汲みながら、CEOやCMOと協調して顧客のために企業内プロセスを変革していかなくてはならなくなってきている。
ITから見ると、マーケティングが考えたことを即座にシステムに反映する、よりパーソナライズされた体験を顧客に提供するアプリケーションをアジャイルに進化させていくと言ったことが求められている。当然それは、デジタルビジネスに合ったプロセスのSoEを構築することが必須となる。
つまりCIOはより企業全体を見渡して、各部門が考えた施策をアプリケーションに投影し、迅速に開発して高いパフォーマンスで運用する責務を負う。それはビジネスに直結しているため、時には顧客体験を損なうこともある。システム障害は、売り上げだけでなくブランド価値にも影響するだろう。デジタルビジネスに変革するということは、CIOは従来に比べてはるかに大きな責任を負うということだ。
――AppDynamicsは、850人まで急速に成長したわけだが、大きな組織になるに連れ、共通の価値観を求心力もって運営する難易度が上がってくると思う。それにはどのように取り組むのか。
重要なことは、目的意識だ。もはや世の中はソフトウェアなしでは回らない。デジタルへの変革のあるなしに関わらずだ。われわれの会社は、それを支えるために活動をしているという、高い目的意識を持ち続ける。
そして会社をより透明に、迅速に意思決定をしていくために、データを重視するということだ。エンドtoエンドの可視性を提供している会社として、この点は自ずと社内の文化として定着しているので、それを大切にしていきたい。
私はこの会社を、ベンダーではなく、顧客にとってのパートナーと呼ばれるようにしたいと考えている。