本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SAPジャパンの佐藤知成 バイスプレジデントと、ソフォスの纐纈昌嗣 代表取締役社長の発言を紹介する。
「電力小売り自由化は、電力事業者がデジタル変革に取り組む絶好の機会」 (SAPジャパン 佐藤知成 バイスプレジデント)
SAPジャパン バイスプレジデント 佐藤知成氏
SAPジャパンが先ごろ、電力/ガス事業者におけるビッグデータ活用などのデジタル化を支援する新組織「ユーティリティ・デジタルトランスフォーメーション・オフィス」を、同社の公益事業統括本部内に設置したと発表した。
同社バイスプレジデントで公共・公益・通信統括本部の統括本部長を務める佐藤氏の冒頭の発言は、その発表会見で、日本において電力小売り自由化が2016年4月からスタートするのに伴い、電力事業者にとってデジタル変革に取り組む絶好の機会になるとの見解を示したものである。
佐藤氏は今回の新組織設置の背景について、「今後、あらゆる産業においてIoT(Internet of Things)化が進み、そこから生まれるビッグデータの活用をはじめとしたデジタル変革に取り組んでいく必要がある。とりわけ電力はそうした全体の動きを支えるエネルギーとなるだけに、まずは電力事業者自体のデジタル変革が強く求められている」と説明し、次のように続けた。
「SAPはグローバルで電力をはじめとしたエネルギー分野のデジタル変革の支援に注力している。中でも間もなく電力小売りの自由化が実施される日本の電力業界は、デジタル変革に取り組む絶好の機会なので、日本法人とともにSAPグローバルとして強力に支援していく体制を整えた。その要となるのが今回の新組織だ」
佐藤氏が言うように、新組織のユーティリティ・デジタルトランスフォーメーション・オフィスはSAPグローバルの公益事業部門と密接に連携し、その名の通り電力/ガス事業者のデジタル変革を支援していくのが役目だ。
具体的には、図に示した公益事業のデジタル化を実現するためのフレームワークに基づいた各種製品やサービスを提案。例えば、IoTがもたらすビッグデータを活用することで、設備の予知保全やピーク需要予測の精度向上を実現したり、デジタル化によるビジネスプロセスの再構築などを支援するとしている。
SAPが提案する公益事業のデジタル化を実現するためのフレームワーク
とはいえ、日本の電力業界におけるITの仕組みは長年培ってきた独自のシステムを今も使用しているケースが多く、デジタル化に取り組むといっても相当大掛かりな変革が必要な印象がある。発表会見の質疑応答でその点について聞いてみると、佐藤氏は次のように答えた。