展望2020年のIT企業

アジアナンバーワンのビジュアルコミュニケーションへの道 - (page 2)

田中克己

2016-02-10 07:30

海外事業を成功させる意気込み

 国内から海外へとビジネスの広がりもみせている。シンガポールに統括拠点を置いて、中国やマレーシア、タイ、インドネシア、台湾、韓国、ベトナムなどのアジア市場を開拓する。海外のデータセンターは14カ所に、海外売り上げは総売り上げの3分の1近い10億円以上の規模に達したという。

 間下社長は「海外で結果を出せたのは、コミットの仕方にある」と意欲の違いを指摘する。簡単に言えば、間下社長自身が現地で起きていることを理解するため、2013年初めからシンガポールに家族とともに移住したこと。「日本より海外で事業を立ち上げるほうが難しいのだから、片手間でうまくいくはずはない。成功しないのは、コミットする人がいないからだ」。

 だから、現地法人から要求が上がってきても、何を言っているのか分からないからと無視する。市場規模が小さいとの理由もあるだろう。そこで、「自ら現地で起きていることを体験し、私がリクエストを出す」。勤務する時間も現在、シンガポールなど海外に3分の2、日本に3分の1の割合だという。

 海外展開の目的は、アジア各国で利用可能なプラットフォームにし、日本のグローバル企業に採用しやすいものにすること。多国展開は、経営上のリスク回避にもなる。例えば、タイ向けが不調でも、インドネシア向け販売が好調なら、海外事業のリスク分散を図れる。

 とはいっても、海外事業が順調に立ち上がったわけではない。「2012年まで泣かず飛ばずで、利益は真っ赤だ」。試行錯誤の連続で、作成した計画通りに進まず、計画内容を50%、100%見直すこともあったという。販売実績の上がらない国の担当者を入れ替えたりもした。

 そうした中で、上場する際に東京証券取引所から「日本のオペレーションはどうなるのか」と尋ねられた間下社長は「ビジュアルコミュニケーションを使う」と答えたという。そのツールを開発、販売する会社の事業を否定することになるので、問題にはならなかったそうだ。

 年4回開催するアナリスト向け決算説明会のうち2回はウェブテレビ会議で実施し、間下社長がシンガポールから説明することもある。説明会のための会議室はいらないし、アナリストはどこにいても参加できる。ブイキューブもビジュアルコミュニケーションのメリットを享受し、次なる展開を図っている。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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