内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

IT部門に求められる投資家向け情報発信の積極的サポート - (page 2)

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2016-02-17 11:01

IT-IRにどのように取り組むべきか

 IR活動そのものは、企業広報部門などが中心的な役割を担うことに変わりはないでしょうが、彼らはITに関する知識も情報も持ち合わせていないため、IT-IRには手を焼くと考えられます。

 IR担当者や経営者は、ITの専門家ではないため、何が企業価値向上のためのIT活用であるか、攻めのIT経営を支える基盤的取り組みとはどのようなものであるかを知らない可能性が高いでしょう。IT部門は、IR担当者や経営者に対して、IT-IRで必要となる情報を提供することが求められます。

 もし、ITに関わる年度活動の総括としてIT白書のようなドキュメントを作成していればそれを提示するだけで済むかもしれません。一方、IT白書などIT部門が整備する資料は、専門的かつ詳細すぎるため、IT-IRの材料とするには、重要な部分の絞り込み、抽象化や要約が必要となるでしょう。

 IT部門は、中期IT計画やIT白書を経営の視点から読み解き、ITの専門家でない株主や投資家にもわかるように解説しなければなりません。その際の参考資料としてIT-IRガイドラインを参照することが推奨されます。

 IT白書の作成と同様に、IT-IRに取り組むこと自体は、いうまでもなく目的ではありません。IT-IRは、株主や投資家といった社外のステークホルダーとのコミュニケーションの手段の1つです。ITを活用する姿勢を社外に示すことで、企業イメージや信頼を高めることが目的です。

 また、統合報告書やホームページにその姿勢を記載するということは、企業として社会や市場に正式に表明することを意味し、経営者が自ら説明できなければならない事項となります。自ら説明するとなれば、自ずと、経営者のIT利活用に対する理解が深まることが期待されます。

 IT部門はこれを、経営者を含む会社全体における「攻めのIT経営」への認識を高める1つの機会ととらえ、IT-IR活動に積極的に取り組むことが推奨されます。

内山 悟志
アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は、大手ユーザー企業のIT戦略立案のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。最近の分析レポートに「2015年に注目すべき10のIT戦略テーマ― テクノロジの大転換の先を見据えて」「会議改革はなぜ進まないのか― 効率化の追求を超えて会議そのもの意義を再考する」などがある。

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