IoTやブロックチェーンなど--「Tech Trends」から見える技術と事業の近未来 - (page 2)

阿久津良和

2016-04-12 07:30

グローバルデータとの整合性が取れなくなる

 「実用段階に来た拡張現実とバーチャルリアリティ」については、「海外でも模索している状態」(安井氏)と前置きしつつ、万人が持つようになったスマートフォンを例に、ユーザーインターフェースの変化はメッセンジャーからスマートスクリーンに移り変わったと説明。次は直感的インターフェースへ移行すると見るDTCだが、海外の一部工場では手を塞いでしまう作業中でも、拡張現実(AR)カメラを通してマニュアルを確認するような事例が登場しつつある。

 仮想現実(VR)はビジネスにつなげるところまで来ているものの、マネタイズに至っていない。「今後1~2年の進化がポイント」(安井氏)と見ている。「実用段階に来た拡張現実とバーチャルリアリティ」ではBlack & Veatchなどの事例を紹介している。

 基幹システムの刷新や再構築についてビジネスへの影響が大きいと考えるCIOが47%と決して高くないものの、投資優先順位では36%と圧倒的に高いため、DTCは同書に「基幹システム再創造」を盛り込んでいる。

 一見すると矛盾を感じるデータだが、その背景には基幹システムが業務で扱うデータをすべて管理しているからだ。この傾向は日本でも堅調だという。

 日本企業の多くは異なる基幹システムを併用するケースが多いため、グローバルデータとの整合性が取れなくなるという問題も発生している。「プラットフォーム刷新に留まり、ソリューションをリプレースすることで新たな価値につなげる企業が少ない。ここを強化しながらアナリティクスなどにつなげていくのが今後の課題」(安井氏)と日本企業の遅れを指摘した。「基幹システム再創造」ではTexas Department of Motor Vehiclesなどの事例を紹介している。

デロイトトーマツコンサルティング 執行役員 パートナー Deloitte Digitalストラテジーリーダー 岩渕匡敦氏
デロイトトーマツコンサルティング 執行役員 パートナー Deloitte Digitalストラテジーリーダー 岩渕匡敦氏

自律型プラットフォームが増えていく

 「Internet of Thingsが価値を生むまで」については、米国で1975~1989年に生まれた“Generation Y(Y世代)”の台頭でサービスの嗜好や行動が大きく異なり、顧客のニーズが細分化したと執行役員でパートナー Deloitte Digital ストラテジーリーダー 岩渕匡敦氏が説明した。

 自動車業界を例に2000年の調査では7回だったディーラーの訪問回数が現在では1.5回まで低下。ユーザーはウェブサイトなどを活用し、デジタル化が進むことで自動車ディーラーの位置付けが相対的に減少していることを明かした。さらに都市のIoT化でデータエコノミーが加速し、最終的には「モノを買うのではなく、体験を優先する時代にシフトしていく」(岩渕氏)と述べた。「Internet of Thingsが価値を生むまで」ではCaterpillarなどの事例として紹介している。

 インフラストラクチャのソフトウェアによる制御と、DevOpsの考え方に基づいた運用管理を指す「Autonomic platforms(自律型プラットフォーム)」については、「コンテナ技術をはじめとする先進的な運用管理ツールの存在が重要。オンプレミスだけではなく、パブリッククラウドとプライベートクラウドで稼働する自律型プラットフォームは今後、日本でも増えていく」(安井氏)と予見した。「Autonomic platforms(自律型プラットフォーム)」ではVMwareなどの事例を紹介している。

デロイトトーマツコンサルティング 執行役員 金融インダストリーディレクター 荻生泰之氏
デロイトトーマツコンサルティング 執行役員 金融インダストリーディレクター 荻生泰之氏

世界中が注目するブロックチェーン

 「ブロックチェーン:特定の権威に依らない『トラスト』の確立」については執行役員で金融インダストリー ディレクターの荻生泰之氏が、「Bitcoin自体はブロックチェーンの一部。世界中で使われているシステムに適合する可能性が高く、効率性もよいため、注目されている」と説明した。現在ブロックチェーンの明確な定義はないものの、最大公約数的な意味では「P2P(Peer to Peer)の分散型データベースと、コンセンサスアルゴリズム(分散型合意形成)を供えているのが特徴」(荻生氏)という。

 複数のコンピュータにデータを分散し、相互に通信することで運営されるP2P分散型データベースは、管理こそ煩雑になるものの信用性の向上や負荷分散が可能になり、国境をまたぐプラットフォーム構築では安定性などのメリットが大きい。

 任意のデータベースが悪意を持って改ざんされた場合、データの整合性をすべてのデータベースに対して認証するコンセンサスアルゴリズムは、虚偽の情報を伝えるものがいる中で正しく合意形成できるかという「ビザンチン将軍問題」を解決する必要がある。ブロックチェーンはこれら両者を備えると同時に、透明性や信頼性、効率性といった長所を兼ね備え、既存システムを置換する存在であると荻生氏は説明した。

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