――InforのクラウドはAWS(Amazon Web Services)をベースとしている。クラウドに対する安全性、信頼性についての懸念は払拭されている?
新造 払拭されてきたと実感しています。AWSそのもののセキュリティへの取り組みもありますが、InforはAWSに任せっきりではなく、社内に最高セキュリティ責任者(CSO)を抱えており、クラウド面のセキュリティをAWSと密に連携しながら見ています。
AWS上のアプリケーションについてはAWSより細かいセキュリティ管理をしており、セキュリティレポートも提供できます。お客様からは、ここまでのセキュリティを実現しているのであれば、自社よりもクラウドを使ったほうが安全で効率的だという意見をいただいています。セキュリティが理由でクラウドに移行するケースも出てきています。
――これまで、System of Record(SoR)といわれてきたERPだが、エンゲージが重要といわれている。この流れをどうみている?
新造 SoR――つまり基幹になる部分で情報を記録するERPとして、Inforでは効率の良いプランニングを実現するサプライチェーンプランニング、フロントエンドでもコマースのアプリなどをそろえます。中でも製造業ではCPQ(コンフィギュレーション、価格、見積もり)に力を入れています。ここでわれわれは2015年5月にTDCIを買収し、TDCIのCPQ技術を製品に統合している。
McColough われわれは日本の製造業を支援しており、ここでCPQはとても重要な技術です。見積もりから受注処理に直結する機能を提供することで、お客様のイノベーションを支援します。その場で見積もりを出し、その情報を基にそのまま工場とやりとりできる――これにより在庫を減らすことができ、効率性が上がります。日本企業のグローバル化にとってとても大きな機能といえます。
新造 CPQは、われわれ自身も社内で使い始めました。見積もりを正確に作成するためには、さまざまな制約条件や販売方針などをすべてルール化する必要があります。われわれもこれを利用して、間違いのない提案、ニーズに応じたご提案をしています。
この作業をお客様と対面しながら実施し、工場側に製造指示に回すことで発注のエラーがなくなり、手戻りが排除されます。また、お客様に対するリードタイムの短縮にもつながります。実際に使ってみてメリットを実感していますが、この分野は今後、さらにニーズが高まるとみています。
――サプライチェーンでは、2015年にGT Nexusを買収した。買収の狙いは何か?
新造 GT Nexusはグローバルのクラウドベースのコマースプラットフォームで、これを買収することで物流、決済などがクラウドに入り、エンドツーエンドで管理できるサプライチェーンを確立できます。
サプライチェーンは製造業にとってエンジンと言えます。これまでもビール会社がどこの工場でどれだけ生産するのが一番効率が良いのかといった最適化が図られてきましたが、企業の中にとどまっていました。GT Nexusを利用することでサプライヤーからデリバリー先のお客様まで、すべてを管理できるようになります。この領域は、今後さらに発展すると見ています。
McColough 各企業が管制塔に立ち、すべてを見渡して可視化しながら、その瞬間に適した発注できる管制塔といえます。Inforはこの領域で間違いなくナンバーワンです。
――発想が変わってきているのか?
新造 以前からサプライヤーから取引先、販売先まで管理していこうというコンセプトがありましたが、一社ではできることは限られていました。
GT Nexusでは複数の企業が管制塔に入ってくるイメージで、必要な情報がここで得られます。メーカーや物流側が主導することになると思いますが、主導者の方と賛同いただける取引先がどんどん入ってくることでさらに大きなメリットが得られます。
McColough これは大きなステップです。これまではネットワークの遅延リスクを見越して予測を立てなければならなかったのが、これを排除できるため、リアルタイムに取引や処理をこなせます。GT Nexusにはプラグインだけで参加できるので、Inforのシステムは必須ではありません。