製造業を中心にERP(統合基幹業務システム)パッケージを提供する米Inforが、クラウドのサブスクリプションモデルに大きくシフトしている。
同社はここ数年でサプライチェーンでのGT Nexusの買収、CPQ技術の統合、クラウド、ユーザーインターフェースの強化などを図っているが、これはすべてグローバル化を図る日本の製造業にメリットをもたらすという。
インフォアジャパンの代表取締役社長、新造宗三郎氏、3月に日本を含む北アジア担当マネージングディレクターに就任したGraham McColough氏――2016年の目標を両氏に聞いた。
――3月中旬に発表した第3四半期決算は好調に終わった。
新造宗三郎社長。CRMやSCMなどさまざまなソフトウェア企業をリードした経歴を持つ
新造 成長軌道にのって推移しています。けん引しているのはソフトウェアライセンスで、中でもサブスクリプションが好調に伸びています。前年対比で受注の件数は323%増え、売り上げベースでは50%の増加となりました。社としてクラウドベースの製品に注力しており、サブスクリプションベースの売り上げモデルに変わりつつあるといえます。
――CRMなどの市場でもサブスクリプションベースのビジネスに移りつつあるが、業界全体のトレンドとなるのか。
新造 欧米では以前からそうなっています。日本でも、お客様の関心が高く、その傾向が強くなっています。自社の資産として持つのではなく、CAPEX(設備投資)からOPEX(運用コスト)へという意向が強まっており、これがクラウドへのモチベーションになっているようです。
Inforではクラウド戦略の一部として、「マイクロバーティカル」戦略を進めています。細分化された業種特化型アプリケーションを提供するもので、自動車の部品サプライヤーでもTier1のサプライヤーが求める機能など、細かくそろえています。これにより、お客様はカスタマイズを減らせます。
カスタマイズはクラウド移行への1つのハードルとなっていました。企業は自社の業務プロセスを実現するためにカスタマイズし、それを重要な要素としてシステムを構築してきました。
ところが、カスタマイズは本当に必要なのかという見方が出てきています。自社の競争戦略につながる独特のビジネスプロセスでない限り、標準を使っていこうという考え方です。これが、すぐに使えるクラウドの利用につながっています。
クラウド向けをつくるのではなく…
――InforはSSA、Baanなどを買収するなど製造業に強いが、製造業向けアプリケーションとクラウドとのすみ分けは?
新造 Infor ERP LN(旧BaaN)は、日本でも海外でも製造業の基幹システムとして生産管理を中心に利用されており、われわれはアプリケーションそのものの革新と拡張を続ける一方で、これをクラウドに載せる作業も実施しています。
Inforのクラウドの特徴は、クラウド向けにアプリケーションを開発するのではなく、(オンプレミスの)アプリケーションをクラウドでも提供するという点です。
つまり、お客様にとってはオンプレミスで使うものと同じものがクラウドで利用できることになり、オンプレとクラウドの差がないということになります。
McColough クラウドを利用することで、顧客はアプリケーションやシステムの運用を心配する必要がなくなり、自社の本来の事業分野でのイノベーションにフォーカスできます。
日本を含む北アジア担当マネージングディレクターに就任したGraham McColough氏
Inforでは主要顧客に向けて、クラウドにスムーズに移行できる“Lift and Shift”を提供しています。オンプレミスを使いながら、クラウドを開始でき、段階的にクラウドにマイグレーションできるもので、“簡単にクラウドに移行できる”と既存顧客に好評です。
――生産拠点が世界に分散しつつあるが、これもクラウドへのシフトを後押ししている?
新造 大いに関係があります。日本の製造業顧客が海外で展開する際、いかにして迅速にシステムを立ち上げるかが課題となっており、クラウドは重要な選択肢となっています。実際、このようなお客様の引き合いを多くいただいています。
また、製品の生産をある生産拠点から別の生産拠点に移したり、生産の規模を調整するといった場合、システムを対応させる必要があります。個別のローカルシステムでは迅速に対応できず、標準化していたとしてもインフラ周りで作業が必要になります。クラウドなら柔軟に対応できます。