展望2020年のIT企業

日本版インダストリー4.0の開発に挑むITベンチャー - (page 2)

田中克己

2016-05-16 07:30

AIやビッグデータ解析などの技術者集団

 稲田CEOと足立昌彦取締役の2人が中心になって、13年1月にカブクを設立した。稲田氏は大手広告代理店で、AIなどのテクノロジーを駆使した新規事業の立ち上げなどを、足立氏は大手メーカーや大手IT企業などで、研究開発・事業開発に従事していたという。

 この2人のAI技術者に加えて、カブクには「データ解析で世界トップクラスの技術者」(稲田CEO)や、3人のグーグル・デベロッパー・エキスパート(GDE)の技術者がいる。ちなみにGDEは日本に10数人しかいないと言われている。

 そんな技術者集団が開発したRinkakは、「インダストリー4.0と目指すゴールの考え方は近い」(稲田CEO)という。ただし、3Dプリンタ中心のエコシステムなので、目下のところ適用範囲が限定されている。今後、生産設備と組み合わせたりし、生産対象を広げる機能強化を図っていく。例えば、先の電動三輪車を例に挙げれば、車すべてをカスタマイズで作るというイメージである。

 こうした消費者1人1人が求める商品をオンデマンド生産するには、3Dプリンタを活用する国内のスマート工場も欠かせない。実は、生産工場は世界30カ国に数百あるものの、国内工場は少ない。「縦割り構造の閉じたもの作りになっている」(稲田CEO)なども影響しているだろう。

 実は、東大阪出身の稲田CEOは「地元の中小製造業が右肩下がりで、弱っている」ことを心配し、打開策を考えている。具体的には、生産革新によって、新しいことに挑戦する経営者に、産業用3Dプリンターなどを活用するスマート工場化とRinkakの活用にとって、ともに“もの作りの民主化”を実現させること。そこに、中小製造業の成長活路を見え出せると、稲田CEOは信じているように思えた。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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