杉井氏:僕はそんなに大きなビジョンを持っているわけじゃないんです。「プロダクトを強化するための道具」だと見ているのが正直なところで、ブロックチェーンはデータベースができなかったところを補強しているものです。誰にも見えないところでひっそりとパワフルに動いている。それが理想で、別にブロックチェーンというバズワードは早く消えたほうがいいと思っているんです。
杉井靖典氏 カレンシーポート 代表取締役 CEO
私の考えだと、おそらくブロックチェーンもデータベースに飲み込まれると思います。あまり夢のない話ですが、ブロックチェーンとは「データベースが機能拡張するための新しい技術・システム」です。
今まで通りの業務設計・システム設計のあとに、普通の技術設定のなかにブロックチェーンがあればいいという感じですね。初めはRDBを選ぶと思うんです。でも特性を知れば、「RDBよりもブロックチェーンの方がよいかも」というふうになるかもしれません。ただ、どちらだけでいいという話ではありません。実は今のSQLサーバは、一昔前のノンSQLサーバの特性を包含しているんです。そのなかにハッシュデータやドキュメントデータを突っ込むことができるんです。同じようにデータベースが拡張して、外部監査や行為アルゴリズムの1つとして新しく組み込まれるかたちになっていくかもしれません。ですので抽象レイヤはSQLかもしれないですが、データベースを強化するための新しいブレイクスルーだと思っているんです。ですから、本当にどこでも使える。逆に言うとどこでも使えるので、ブロックチェーンのインパクトが67兆円と言われていますが、本当はもっと大きいかもしれません。
朝山氏:じゃあ僕は違う観点から。勝手にこの先に来ると押しているキーワードに「トークンエコノミー」というのがあるんです。先ほど話にでましたが、ビットコインなどのブロックチェーンのアセットもトークンの1つです。そしてスマートコントラクトが始まれば、投げる命令文や契約のすべてがトークン化されます。なぜ弊社がNEMのコアデベロッパーと組んでパブリック・プライベートの両方を扱っているか。あらゆるものがトークン化された際に、先ほどのパブリック・プライベートの信用の度合いとして、ローパフォーマンスでもトラストレスのパブリックの世界でトークンも動けば、企業の中で非常に小さな単位でトークンを動かしている世界もある。
朝山貴生 テックビューロ 代表取締役所長
この世界をみたときに、先ほどの平野さんのお話ともつながりますが、小が大に勝てる世界にもなりうると思うんです。今までですと「信用の担保」というものが、大企業だったりといった既存の信用がなければ戦えなかったところ、そこをブロックチェーンまかせにすると、「僕らの言っている数字は本当ですよ」とコストや人力や看板を持ってきて証明しなくても、そこをすっ飛ばしてサービス開発やシステム開発ができる。普通にある言葉ですが、それを僕らは「トークンエコノミー」と呼んでいるんです。
もう一個ちがう見方をすると、ブロックチェーンで動いているビットコインやイーサリアムの上に乗ってくる、もっと価値が何十倍、何百倍、何千倍……というトークンが現れ始めているんです。The DAOだってイーサリアム上で作られたけど、本家を抜いてしまったという新しいトークンの資産ですし、今年来年ではそれを活用した「企業専門トークン」 「コンソーシアム用トークン」といった事業・事例が増えてくるでしょう。