(4)ITインフラストラクチャが「所有」から「利用」へと変化する
- 自社・自組織でITインフラストラクチャを構築・運用保守する「所有」モデルから、必要なときに、必要な分だけ、ITインフラストラクチャを「利用」するモデルに変わる。それにより、ITインフラストラクチャに係る経費はCAPEX(投資)から、OPEX(運営費)へと変わる
- ITインフラストラクチャに係る経費管理の要所は、中長期の利用計画の策定とそれに基づき投資した経費の「回収」から、事業の状況により変動する利用料の事業価値との紐付け評価(評価支援)と、機動的な実行計画見直しへとシフトしていく
クラウド利用というとテクノロジの視点で検討されることが多いことから、特に4点目については比較的見落とされがちであるが、この点を十分考えないままクラウドを導入すると、経費削減効果やガバナンス強化といった効果を十分得られないままとなってしまう。
本連載の最後に、4点目に挙げたポイントについて深掘りしておきたい。
ITシステムの「所有」と「利用」--真のクラウドとは
これまで述べてきた通り、マルチスピードIT時代に求められるITシステムには、新事業への進出、実現をトライ&エラーで進めるための「足かせ」とならないことが求められる。
- 中長期利用計画やそれに基づいた事前準備が十分にない状態でも、適切なITシステムを必要な量だけ、迅速に利用開始でき、撤収可能なこと
- 利用料も、消費量に応じて変動可能なこと。使用していないときにも利用料負担が発生してしまうことがないこと
- IT技術・IT製品は、日進月歩で高性能化・高機能化・低廉化していく。この恩恵を、利用料の低廉化や、機能や性能の向上といったかたちで継続的に享受できること
ドッグイヤーやマウスイヤーといった言葉で語られるような速さで日々環境が変化するマルチスピードIT時代において、減価償却期間に準じた3~5年、場合によっては8~10年といった中長期でのITシステムの投資計画を厳格に策定することは極めて困難である。
その結果、必要なITシステムリソースを過大に計上することによるIT経費の高止まりや、本来必要なITシステムリソースをタイムリーに提供できないことによる機会損失が生じてしまう。そのため、「所有」から「利用」への転換は決定的に重要な意味を持つことになる。