日本での議論
日本では10月28日の「金融制度ワーキング・グループ」で、EUのPSD2をもとにした中間的業者の分類が議題されました。EUのPSD2におけるPISPは免許制ですが、AISPには財務要件がありません。これで十分に監督ができるのか。また、PISPは資本金が財務要件を満たしていたとしても、免許制なので許可が降りない可能性もあります。そういった許認可をどう考えるべきかというのが、今まさに議論されている内容です。
銀行のAPI化の進行と中間的業者についての制度の議論はセットで考える必要があるのですが、両者が進んだ場合の影響はどのようなものが考えられるのか。
技術的にはAPI化された方が、個別のサービスが口座情報を活用するサービスを提供しやすくなります。ただ一方で、中間的業者の条件に強い要件が加わると、参入できない企業が多くなってしまうかもしれません。申請するための財務要件の資本金をいくらにするか、何か起きたときの対応は、責任保険への加入で準備してもらうのか、それとも資本金を当ててもらうのかなど、いろいろな基準があるため、その温度感によって状況は変わるでしょう。
もちろん、多くのケースで規制がない方がイノベーションは発達しやすいものです。しかし、情報利用に対して、企業がどういったセキュアな体制を取ることが社会的に求められるのかは、制度として具備される必要があります。なぜなら、想定外のことをするプレイヤーが出てしまうリスクがあるからです。それらの不確実性が低い方が、中長期的には良いイノベーションが生まれてくるのではないでしょうか。
このように、銀行の外での銀行取引をいかに増やして引き込むか、そのためにAPI化をどのように進めるかを検討する上で、中間的業者の扱いは非常に重要です。社会的な期待値を制度に反映させていくことが、これからの焦点になっていくと思います。
この記事はマネーフォワードの 瀧 俊雄氏が語った内容をZDNet Japan編集部が再構成している