利用者のすそ野を広げる策
ユニゲージ開発手法の原型は、スーパーのダイエーにおけるダウンサイジング・プロジェクトにある。きっかけは、ダイエー創業者の故・中内功氏が「基幹システムのコストがかかりすぎている」とし、立ち上げた特命プロジェクトに當仲氏が参画したこと。メインフレームをUNIXマシンにリプレースし、保守・運用まで社内で手掛けられるようにし、大幅なコスト削減に成功したという。
當仲氏はその後、特命プロジェクトがなくなり、中内氏が去ったダイエーを退社し、2005年にUSP研究所を設立する。ダイエーなどで培ったノウハウを生かしたシステム開発手法の研究開発やライセンス販売、教育、普及活動を始めた。
ユニゲージ開発手法の利用企業は着実に増えており、東京電力(スマートメーターのデータ変換)や川重岐阜エンジニアリング(製図情報分析)、ワールド(CRM)、コープネット事業連合(宅配サービスの請求作成バッチ)など約40社に達するという。
當仲氏は「『これはいいぞ』という感度の高いファーストユーザーから、『あそこが使っている』といううわさをききつけて、『当社も使ってみよう』というセカンドユーザーが増えているところ。社員約40人の有限会社で、これだけのユーザーがいる」と自信をみせる。
USP研究所はユニゲージ開発手法をさらに広める策を練っている。「多くの企業が安心して、導入に取り組めるようメジャーなものにする企業力をつける。その準備をしている」(當仲氏)。例えば、開発エンジニアを現在の約20人から増員する。営業やマーケティングなどを含めた仲間作りも推進する。開発や販売のパートナー企業も今の約20社から増やす。
海外展開も図る。欧米市場の顧客開拓拠点として、カナダとポルトガルに現地法人を設立し、各国にパートナー企業を設けている。カナダのデロイトが「SIの道具」(當仲所長)として採用したほか、ポルトガルではデルタコーヒーなど2社が導入したという。スペインでもパートナーとの協業を始めたところ。アジアでは、モンゴルやミャンマーでユニゲージ開発手法の人材教育を開始し、世界で活躍できるエンジニアの育成を支援する。
内製化を検討する企業は、業務もプログラミングも分かる人材を求めるだろう。そこにユニゲージ開発手法を提案する。當仲氏は「ITはスペシャリストのものではない」とし、トップ自らがIT活用をリードする時代の到来を期待している。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。