最後に、政府のAI関連政策を紹介する。政府は、4月12日に開催された第5回「未来投資に向けた官民対話」で、安倍総理が、人工知能の研究開発目標と産業化のロードマップを、本年度中に策定するため、産学官の叡智を集め、縦割りを排した「人工知能技術戦略会議」を創設することを発表した。
「人工知能技術戦略会議」では、今年度から、本会議が司令塔となり、総務省・文部科学省・経済産業省の人工知能技術の研究開発の3省連携を図り、「研究連携会議」と「産業連携会議」を設置している。本会議では、国際競争力の強化に向けて、AI技術の研究開発と成果の社会実装を加速化していくとともに、2016年度末に人工知能の「生産性」「健康、医療・介護」「空間の移動」「セキュリティ」などの産業化のロードマップを策定するなど、産学官連携の推進役を務める。
出所:総務省情報通信審議会 2016.12 次世代の人工知能技術の研究開発における3省連携体制
11月には、AIネットワーク社会推進会議も開催された。本会議では、「AI開発ガイドライン」(仮称)の策定に向けて検討する開発原則分科会、AIネットワーク化が社会・経済の各分野にもたらす影響とリスクの評価を行う影響評価分科会から構成される。私自身も影響評価分科会に構成員として参加しており、AIネットワーク化社会における産業やICTの在り方を議論していければと考えている。
以上のように、2016年は、AIやロボット、ドローン、自動運転車などのスマートマシン関連が大きく動きだした年でもあった。今後5年間かけて、「スマートマシン」のメインストリームに向けて、あらゆるコト、モノのインテリジェント化によるサービス化や自律化が進み、産業構造そのものが大きく変革していく可能性がある。引き続き、「スマートマシン」関連の動きには注目し、デジタル社会の未来像を考えていきたい。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。