展望2020年のIT企業

趣味嗜好の行動分析が創り出すビジネス - (page 2)

田中克己

2016-12-28 07:30

趣味の多様化に応えるサービス

 最高経営責任者(CEO)の宮本氏は2004年、富士通系SE子会社にSEとして入社する。3年後に米国転勤になり、日系企業のサポートを担当するとともに、次世代システムのコンサルティングを担う。大量データを分散処理するオープンソースソフトウェア「Hadoop」、さらにビッグデータやマシンプラーニングなどAI関連技術の話題が出始めたころで、それらの活用提案も始めたという。

 2015年4月に国内勤務に戻った宮本CEOは、新規ビジネス部門への異動を希望し、趣味嗜好の行動分析などに関する企画書を提出する。だが、富士通グループは、宮本CEOが考えたようなBoCビジネスを手がけないとなり、起業を決断した。

 旅行を選んだのは、「画像認識や音声認識などにDLを使うITベンチャーはたくさんいる」(宮本CEO)が、趣味嗜好に関する個人の情報を収集、分析し、新しい価値を創出することに挑戦するITベンチャーは少ないからだという。1日も早く資金を調達し、開発を加速させたかった。「意思決定の遅れは、自分が描いたビジネスモデルを他社に先行されてしまう」との焦りもあったのだろう。

 スマホ向けアプリは2016年12月に提供を開始し、2018年に約100万人の利用を見込んでいる。2019年には海外展開を始め、2020年に約500万人に拡大させる。ディープスはこれら利用者の行動分析を旅行企画会社や地方自治体などに販売する。

 ただし、当面の収益は音声や映像、AR(拡張現実)などのデジタルコンテンツで、1コンテンツ120円から販売する予定。例えば、先の母親のために好きなグループサウンズの映像やARを使った体験をさせてあげるなどだ。どんなコンテンツを用意するのか注目したいところだ。

 ディープスは、アマゾンが年1冊しか売れない書籍を扱うように、スマホ向けアプリを使って日本人1人ひとりの体験と知識を共有するプラットフォームに仕立てる。そのため、趣味趣向の対象を、たとえば衣料や飲食などへと広げていく。好みの多様化に応えるサービスにするということだろう。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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