FinTechの実際

2017年はFinTech体験の機会が増大--利用者のニーズが明らかに - (page 4)

小川久範

2017-01-05 07:00

 第3に、未上場企業の株式に投資できるクラウドファンディングである。日本クラウドキャピタルが運営する「FUNDINNO(ファンディーノ)」は、未上場のベンチャー企業に投資するプラットフォームである。上場企業に対する投資よりも当然ながらリスクが大きいため、1人が1社に対して投資できる金額や、1社が1年間に調達できる金額には制限がある。ベンチャー企業が上場したり、買収されたりして株主が大きなリターンを得る可能性はあまり高くはない一方、上手くいった場合は相応のリターンが期待されるので、堅実に資産を増やすためというよりは、事業内容に共感したベンチャー企業を応援するため、最悪の場合無くなっても良いお金を、宝くじを買うようなものと割り切って投資するべきであろう。

子どもを見守るFinTech

 小学生の子どもにそろそろお金の使い方を学ばせたいと思っている父親として注目しているFinTechがある。MoneySmart(マネースマート)が発表した「omamori(おまもり)」は、子どもがどこにいるのか、どのようにお金を使っているのかという親の心配を解決する。交通系ICカードをトラッキングデバイス「om2 wallet(オムニウォレット)」に格納し、親子のスマートフォンにアプリで連動させることで、子どもが駅の改札を通ったり、店舗で買い物をしたりすると、アプリにその情報が反映される。これにより、子どもが地元の駅に到着したから迎えに行く、無駄遣いが多いことを注意するといったことが可能になる。中学受験のため、電車に乗って塾に通う小学生などに適したサービスと思われる。


omamori(出所)MoneySmart

om2 wallet(出所)MoneySmart

利用者のニーズが明らかになる2017年

 2017年は、個人向けのFinTechサービスが本格的に提供されることで、利用者のFinTechに対するニーズが明らかになると考えられる。実際にサービスを提供し、利用者からフィードバックを得られれば、個人向けFinTechサービスはより洗練されたものへと進歩する。ここからは、サービスの改善スピードが、FinTechベンチャーの競争力を左右する。そして、グロースハックに成功し、大きく飛躍するFinTechベンチャーが登場したら、動きが遅い金融機関がそれに追いつくのは難しい。また、実績を上げたベンチャーと提携しようにも、既に競合する金融機関と密な関係を構築してしまっている懸念がある。金融機関は、個人向けFinTechサービスに注目し、有望と思われるところとは早めに提携の話を進めるべきである。

小川久範
日本アイ・ビー・エムを経て2006年に野村證券入社、野村リサーチ・アンド・アドバイザリーへ出向。ICTベンチャーの調査と支援に従事する。560本以上の企業レポートを執筆し、数十社のIPOに関与した。2016年みずほ証券入社。FinTechについては、米国でJOBS法が成立した2012年に着目し、国内スタートアップへのインタビューを中心に、4年間に亘り調査を行ってきた。2014年10月には、国内初のFinTechに関するレポートを執筆した。FinTechエコシステムの構築を目指す「一般社団法人金融革新同友会FINOVATORS」副代表理事。

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