RPAの価値

一気に拡散した「RPA」の正体--“デジタルレイバー”を味方につける - (page 3)

信國泰(デロイト トーマツ コンサルティング)

2017-03-28 07:00

 活用の度合いにおいて多少の差はあれどもホワイトカラーの実務はどの業界においても存在するため、特定の業界が先行している、という差はあまりない。

 海外勢との激しい競争にさらされてきてコスト削減努力を長年進めてきている製造業などでもRPA活用の余地は大きく、多くの製造業の会社で活用は進んでいる。

 銀行や保険などの金融機関においては規模も大きく(導入するロボットの台数が多い)活用度合いに多少の差はあっても、電力やガスなど規制に守られてきた業界も大きな業界システムの変化のなかで人手を確保する必要に迫られている。

 官公庁や自治体などにおいても労働集約的に処理する事務手続きは膨大だ。RPAに対する期待は業界横断的に極めて高いのだ。

 RPA市場は急速な拡大が見込まれている。第三者機関から発表されている市場見通しもそうだが(図2)、デロイトトーマツコンサルティングとしてもRPAに取り組み始めてから1年足らずのうちに数百社からの引き合いがあり、多くの企業が着目していることを実感している。

 リサーチデータを見ても、絶対的な市場規模の大きさ自体は地域間で差があるが、市場の伸び率はどの地域を見ても極めて高い水準で今後拡大していくと予想できる。


図2:RPA市場の規模
出典:Occams Business Research Global IT Robotic Automation Market 2015-2021

 RPAの活用に真っ先に着目したのがシェアードサービスセンターのように多くの業務処理をつかさどる組織だ。RPAによる生産性向上の効果を得るには多くの人手をかけている部門・業務に導入するほうが当然効果が大きい。

 図3はデロイトがグローバルで実施したRPA活用に関するサーベイの結果からの抜粋であるが、実に7割もの企業が「検討している」または「実際に導入している」と回答している。


図3:Deloitte 2016 Global Outsourcing Survey
多くの企業でSSCやBPOの次の一手として導入を検討している

 この結果から、現時点でRPAの検討を何もしていない企業は、ホワイトカラーの生産性向上という大きな命題において大きな後れを取っているといえるのではないか。

 次回は、実際の導入事例を紹介し、活用のイメージをさらに詳細につかんでもらいたい。

信國泰 デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナー
ビジネスモデルトランスフォーメーションサービスの責任者。CFOサービス、サプライチェーンマネジメントの分野で数多くのプロジェクトを手がけており、グループ全体にまたがる機能再配置や連結業績評価・損益管理、財務オペレーション改革、販社営業改革、グローバルPSIなど、改革立案から実行、IT導入まで改革プロジェクトをクロスボーダー・フルライフサイクルで数多く実行している。

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