イノベーションを起こす「デジタル人類」

あなたの会社でイノベーションを起こす「デジタル人類」の正体 - (page 3)

林大介

2017-04-18 07:00

デジタル人類の定義

 ではデジタル人類という単語を考えてみよう。人類とはどう定義されるか、という問いにはいくつかの解や説が存在する。「思想を持っていること」「道具を扱えること」とさまざまだが、一般的に論じられるエッセンスをまとめてみた(図2左)。何をもって人類とするかは置いておき、これらに筆者が考えるデジタル人類像を当てはめてみる(図2右)。


図2

 まず、デジタル人類の機動力は無限である。ネットワークがつながっている限り、彼らはサイバーの世界であればどこにでも行くことができる。実際に物理的に移動しなくても、たとえ仮想空間での出会いでも、それを現実のものとしっかり受け止められる。

 そして、当然のことながらデジタルデバイスの活用度は高い。また、彼らにとって言語の壁はさほど高くない。実際のところ、カメラに写しただけで外国語を翻訳して合成するソフトも登場しているし、同時翻訳技術の進歩も早い。そもそも、Facebookの「いいね!」やLINEのスタンプは既に言語を超越したアクションになっていると言えるだろう。

 そして彼らも人間であるので情動を大切にし、特にアーティスティックな表現を好む傾向にある。さらに、彼らにとってデータは資産であり、データは隠すものではなくてお互いに融通するものであると捉えている。

 データは天下の回りものという思想で、身の回りのサービス向上のためには自身のデータ提供を惜しまない。最後に、彼らはどのような変化が起きようとも、それを新しい価値観として受け入れる柔軟性を持っている。

 これらの定義を総合すると、デジタル人類とは「あらゆる制約からの解放を望み、データを武器に心を豊かにできる自由人」と言えるのかも知れない。読者自身、もしくは身の回りにこんな方が少なからず存在するのではないか。

デジタル人類を味方に付けた企業が勝つ

 クラウドに代表される昨今のデジタル技術革新の大きなメリットの一つとして、変革のための時間やコストが大幅に削減されたことが挙げられる。今やサーバを発注して届くのを待つ機会は激減し、アイデアを思いついた側からプログラミングして直ぐに試すことができる。

 そしてこれらのメリットは全ての企業に公平に与えられたものであり、言い換えればどの企業にも変革を起こすチャンスが訪れているのである。

 どの企業にもチャンスがあるということは、裏を返せばどの企業も危機に直面していると言える。自社の事業モデルがいつまでも安泰とは限らない、というのはどの経営者も理解しているはずだが、その想像をはるかに超えたスピードでイノベーションは突然やってくる。

 世は戦国時代の様相で、一晩でいきなり目の前に城が建設され、一瞬にして全ての優位性を失うことがあり得るのである。加えて言えば、変革や革新は長いスパンで見ればいつか”必ず”起きる。

 必ず起きるのであれば、変革を起こされる側ではなく、起こす側に回るべきなのは自明だ。チャンスを逃さないために、変化の流れに敏感に反応し、素早く適応していく新しい人類=デジタル人類を味方に付ける必要がある。

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