前回は、過労自殺事件を発端に表面化した従業員の健康管理に着目し、企業の競争力を高める健康経営の事例や実現のためのポイントを紹介した。
本稿では、昨今高まる働き方改革の機運への対応として、Social、Mobile、Analytics and Cloudといった「SMAC技術」を活用して生産性を向上させた先進事例紹介した上で、取り組みの実施に留まらない生産性向上の成功要因について述べる。
迫られる生産性向上効果の創出
「働き方改革」という言葉が、連日メディアをにぎわせている。先日も、働き方改革実現会議にて長時間労働是正などに向けた実行計画が取りまとめられており、国を挙げての改革の機運が高まっている。
企業側も、残業時間の削減・抑制に本格的に取り組む動きが出てきており、特に「20時以降は残業禁止」などの労働時間にキャップをはめる施策については、ニュースなどでも紹介される機会が目に見えて増えてきた。
しかしながら、労働時間にキャップをはめる施策は、短期的には残業時間の削減・抑制に一定の効果が得られるが、長期的にはリバウンドを引き起こしかねない。
業務量や仕事の進め方が変わらない状態で取り組んだとしても、業務があふれ、労働時間の過少申告や「持ち帰り残業」による労務リスク、業務品質の低下といった別の問題を引き起こす可能性が高まる。労働時間を制限するだけでなく、業務を効率的に遂行できるようにしなければ、残業時間の削減・抑制を持続的に行っていくことは難しい。
従来であれば、業務効率化と言えば既存の業務の構造を見直すBusiness Process Re-engineering(BPR)や基幹システムの導入・刷新が主な取り組みとして挙げられていた。
これらの施策は効果も絶大である反面、検討やシステム導入に時間・コストを要するものであり、短期間で成果創出が迫られている働き方改革に対応するためには、別の施策も並行して模索する必要がある。そんな中、SMAC技術を利用し、短期間・低コストで効率化効果を創出する企業が現れ始めている。
業務時間の定量事実をつかめ
業務を効率化する際、自社・自組織のどこにムダがあるのか、また、組織として本来時間を割きたい業務に時間を費やせているのかは、管理職や担当者が感覚的に理解してはいるものの、事実としてつかめているケースは少ない。
その定量的事実を把握する際に活用するのが「toggl」「Clock It!」といった、業務時間測定ツールである。これらのツールを活用することで、各組織のメンバーや管理職がどういった業務にどの程度の時間を費やしているのか、実態がわかる。
具体的には、測定期間を1~4週間などと定め、測定対象者が会議や資料作成作業などの開始時・終了時にストップウォッチのように「開始」「終了」ボタンを押すことで、各業務に費やした時間を記録する、という手法で誰でも簡単に取り組むことができる。