座談会@ZDNet

銀行で急速に高まるベンチャーマインド、減点主義からの転換--FinTech座談会(2) - (page 3)

飯田樹 山田竜司 (編集部)

2017-05-25 07:00

 落合氏:進めていく中で、次第に雰囲気が変わる面もあるということだと思います。大久保さんは(ネット)銀行から銀行に移られていますよね。みずほ銀行と前の銀行で少し環境が違うと思いますが、そのなかで感じることも含めてお話いただけますか。


みずほフィナンシャルグループデジタルイノベーション部シニアデジタルストラテジスト 大久保光伸氏

 大久保氏:私が銀行に関わったのは、マルチベンダーのSIerで仕事を始めたときからです。そこでシステムの企画から開発、運用までを銀行サイドで推進していました。その後、ネットバンクのシステム企画部、営業統括部に所属し、FinTechについても3年間くらい担当しました。メガバンクとの大きな違いは支店がないことです。

 顧客規模の違いもありますが、営業店の取引先と相乗効果が出せないか、というやりとりが発生するのが、今までになかった動きです。2016年の5月に中長期経営計画が打ち出されて、その中で明示的にFinTechへの対応が記載されました。

 皆さんのコメントのように「今まで恐る恐るやってきたことをチャレンジしていこう、失敗したら早めにやめなさい」という状況になって、これまで評論家のように見ていた人たちが、案件に対して自分で答えを出していくようになりました。また社内では、オペレーショナルエクセレンス(卓越した業務遂行力を強みにすること)の分野で人工知能(AI)を活用して業務の効率化ができないかという動きも活発です。

スタートアップは本当に銀行をディスラプトするのか?

 落合氏:金融庁の金融モニタリングの有識者会議などでも、もう少し将来を見据えてリスクを取っていこうという話になってきました。メガバンクの皆さんが取り組まれているところと同じ方向と思います。逆に、スタートアップの方での変化や、FinTechの今の流れについて、大平さんはスタートアップからいろいろと話を聞く立場かと思いますので、何か変化があればお願いします。

 大平氏:2015年ぐらいにFinTechという言葉が出た頃は、銀行側の担当者も「スタートアップ側が銀行をディスラプトする」という文脈から、スタートアップを怖がる向きもありました。一方のスタートアップ側はそんなことはなく、「ベンチャーと銀行はアライアンスを組んでいく」という方向性で話をしていました。

 2016年後半ぐらいから為替業務や投資の部分で業法の中に入り込み、アライアンスを組むのではなくて、銀行をディスラプトするというベンチャー企業が徐々に生まれてきています。そこのベンチャーのマインドも、少しずつですが「金融を担うのは自分たちだ」となり始めていて、それは健全な仕組みになっていくのではないかと感じています。

 落合氏:そういうところでの協業も進んできていると思います。先ほどロボアドバイザーというお話もありましたが、今年面白いと思う分野や事例をお話いただけますか。

 大平氏:個人的には「クレジットスコアリング」が2017年のテーマです。若年層がクレジットカードを作れなくなったり、上限金利などの規制によって借りたくても借りられない人たちがいたりする現状に対して、今は手を打てていません。

 顧客の信用情報の細分化を行い、貸出可能な潜在顧客の開拓を可能にすることで、既存の金融機関から借りることことのできない人たちへ金融を届けるというのはひとつの大きなテーマです。その領域を扱うベンチャー企業の起業も、徐々に始まっていくのではないでしょうか。

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