落合氏:私もFinTech協会などで付き合いがあるなかで、既存のベンチャーの話をすると、既にAPIでの接続を実現している事業者などはAPIで銀行と接続するとしても、融資の部分で組めるようにしたいと思っています。また、トランザクションレンディングのような形で融資の世界に入って、金融包摂(金融領域での社会的包摂)を実現できるような仕組みを作りたいというベンチャーもいます。
2016年にFinTech協会で聞いた話として多かった制度面の要望は送金決済の方だったのですが、今年は結構融資に関するFinTechも盛り上がりそうですよね。大久保さんが今まで取り組まれてきている中で、融資に関してお話いただけることがあればお話しいただければと思いますが、いかがでしょうか。
大久保氏:銀行の3大業務の一つである融資はFinTechの中でも注力しているビジネスですね。既にマネーフォワード、freeeとは連携しており、AIを活用した法人のトランザクションレンディングなど、今後与信モデルを確立し、市場を開拓していければと思います。

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士 落合孝文氏
ターゲティングはどう変わるか
落合氏:藤井さんからは、融資に関してでも、本来業務の話でも、どういう風に変わりそうかをお願いします。
藤井氏: 国内産業の市場規模は頭打ちで、今後、人口減少と共に市場規模は縮小していくことも予想されています。成長市場でビジネスして成長していくケースと、成熟市場でシェアゲインしていくやり方では、戦略が異なってきますよね。
金融機関に限らず、そういう中で、企業が規模を拡大して業績を伸ばしていくためには、海外市場を攻める必要があると思いますし、国内市場の中でどうやってシェアを取るかを考えなければならない。そういう意味ではバランスを取るのはものすごく大変だし、戦略も多岐にわたってくるでしょう。
その中で、テクノロジをどう使うかは非常に重要になってきています。金融機関以外の企業や、EC系や流通系の企業などが金融サービスに参入しており、ロボアドバイザーなど、FinTechベンチャーの中でもライセンスを取って融資や資産運用をする企業が日本に出てきています。
そうすると、顧客とのエンゲージメントをいかに確保・強化していくかが、デジタルな競争における鍵になるわけです。消費者は1日の時間の大半をおそらく情報収集に使っていて、その機器はスマートフォンだったりする。そこをいかに取っていくかが非常に重要です。
競争環境がどんどんデジタルに移っていく中で、金融機関だけが競合ではなく、消費者とのインターフェイスやそこでのエンゲージメントを取っていくプレーヤーと競争していかなければならない環境に、急速に変わりつつあります。
そうしたプレーヤー以上のことをやらないと競争力は保てません。デジタル時代にはR&Dが非常に重要ですが、金融機関にも今まではそうした概念はありませんでしたし、取り組んでいく必要があります。
また、われわれはイノベーションを特別視しがちですが、例えばGoogleやAmazonなどのIT先進企業は、われわれがイノベーションと思っていることを、通常のビジネス開発として“普通に”行なっています。こういったプレーヤーと競争していく時代に入っているので、いかにマインドセットをシフトできるかが、日本の金融機関では非常に大きなターニングポイントではないかと思います。