金融(Finance)とテクノロジ(Technology)の造語であるFinTech。2015年にはメガバンクグループでFinTech専門組織の設立が相次ぎ、FinTech協会も設立された。2016年には金融庁を中心とした法制度の整備が進んだことも記憶に新しい。FinTechに対して、金融の現場ではどのような取り組みがされており、どこに向かっているのか、識者5人が語る。参加者は以下のとおり。
参加者(自己紹介順)
- 藤井達人(三菱UFJフィナンシャル・グループデジタルイノベーション推進部シニアアナリスト)
- 大久保光伸(みずほフィナンシャルグループデジタルイノベーション部シニアデジタルストラテジスト)
- 平手佑季(三井住友フィナンシャルグループ ITイノベーション推進部部長代理)
- 大平貴久(トーマツベンチャーサポートアドバイザリーサービス事業部 FinTechリーダー)
- 落合孝文(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士)
ITの巨人が金融領域に進出
大久保氏:Google、Amazon、Facebook、AppleそしてAlibabaなどGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字)Bankが、インターネット上のありとあらゆるデータを駆使してファイナンシャルサービスを提供しています。
落合氏:ITの巨人が金融に手を出しているのが明確になり、日本にも上陸しつつある状況のなかで、日本でも本当に戦うべき相手が目に見えるようになりました。私も最初にFinTechに関わった時からそういう話は聞いていましたが、2017年になって、それがより明確に見えるようになってきている感じがします。大平さんは、そういう点はどう思われますか。

トーマツベンチャーサポートアドバイザリーサービス事業部 FinTechリーダー 大平貴久氏
大平氏:最初の頃は「FinTechベンチャーが既存の銀行をディスラプトする」といった文脈がありましたが、ウェブ系の新興企業が金融領域に進出することが、起こりうる脅威だと思います。個人的には、給与の受け取りが最後に残ると予想していますが、何が起点になり、何が守るべき砦になるのかは見極めていくべきだという気もします。
落合氏:銀行が担っていたビジネスは、何十年前だったら銀行にしかできないものだったと思うのですが、融資や送金などがスタートアップでもできるようになってきた世の中で、本当の金融機関の強みは何かという問題が出てきますよね。
大平氏:金融機関は高額帯を対応し、少額帯は別のところでやるべきだという議論もあるので、銀行側としても全方位的にやり続けるスタイルを取るのかという議論もあるかもしれません。
平手氏:給与振込も、スタートアップが担う日が来てしまうかもしれないです。