筆者の記憶では、富士通がAI関連特許の出願数を根拠にしながら、「日本のITベンダーでトップの実績」と強調したのは初めてだ。ただ、同社がAI分野でこれから戦うべきは、先行するグローバルベンダーである。例えば、IBMやGoogle、Microsoftなどと、どう渡り合っていくのか。世界を舞台にしたZinraiの躍動に期待したい。
「われわれにしか作れない魅力的なハードウェアを提供していきたい」
(米Hewlett Packard Enterprise 高野勝 データセンター・ハイブリッドクラウドCTO)

米Hewlett Packard Enterprise(HPE)の高野勝 データセンター・ハイブリッドクラウドCTO
日本ヒューレット・パッカードが先頃、データセンター・ハイブリッドクラウド部門の事業戦略について記者説明会を開いた。米HPEの同部門で最高技術責任者(CTO)を務める高野氏の冒頭の発言は、その会見で、製品作りにおけるHPEの基本姿勢を述べたものである。
それでは、「われわれにしか作れない魅力的なハードウェア」とは、どのようなものか。高野氏は次のように説明した。
「HPEはハイブリッドIT環境におけるデータセンターを支える製品群を展開しており、その最大のポイントは運用管理のシンプル化にあると考えている。また最近では『Software Defined』(SD)という考え方が注目されているが、それもさることながら、大量のデータを高速処理するためには、やはり高性能のハードウェアが必要だ。ならばHPEは、それらを併せ持った当社ならではのユニークなハードウェアを提供していこうというのが、基本的な考え方だ」
その上で高野氏が挙げたユニークな製品については、関連記事をご覧いただきたい。そして、同氏はHPEの強みとして、図のように「テクノロジ」と「エコシステム」を挙げた。すなわち、先進技術によって魅力的な製品を提供することと、パートナー企業との連携だ。同氏は図を示しながら、次のように語った。

「テクノロジ」と「エコシステム」からなるHPEの強み
「HPEはこれまで事業や製品の『選択と集中』を実施してきた結果、ここにきて注力すべき分野がだいぶ明確になってきた。今後も自ら選択した分野を一層深める形で尽力していきたい」
高野氏の説明を聞いて筆者が強く感じたのは、あらためて「HPEはハードウェアに回帰した」という点だ。振り返ってみると、HPEは2015年11月に従来のHPから分割した後、ハードウェアを軸としたインフラ事業に注力すべく、サービスやソフトウェアの事業を分離してきた。つまり、ハードウェアへの回帰を着実に進めてきた形だが、同氏によると、その内容がここにきて明確になってきたというわけだ。
HPEは先頃、「メモリ主導型コンピューティング」の実用化を目指した次世代機「The Machine」のプロトタイプも発表。ハードウェア回帰へのイメージを一層強めているようにも受け取れる。これも高野氏が言う通り「選択と集中」による、まさしく戦略だ。果たして、確固たる存在感を発揮し続けられるか、注目しておきたい。