展望2020年のIT企業

日本発IoTプラットフォームに挑むITベンチャー

田中克己

2017-06-29 07:30

 「日本発IoTプラットフォームを広める」。クラウド型IoTプラットフォームを手がけるKii(キー)の鈴木尚志社長は、「そんなことは難しい」と業界関係者から言われているが、成し遂げる強い決意だ。IoTプラットフォームの覇権争いの激しさが増す中で、70人弱の陣容である同社はどう戦うのだろう。

IoTソリューションの開発環境を提供するKii

 Kiiは2012年にモバイルに特化したIoTプラットフォームの提供を始めた。「マシンにデータを集めるマシン中心のMtoMに興味はなかったが、人を中心とするモバイルを活用するIoTが現れてきた」(鈴木社長)とし、ビジネスチャンスととらえて、IoT市場に参入する。

 その1つは、血圧や体重などのデータをモバイル端末に収集、蓄積したらクラウドに送り、統計処理やデータ分析を行うもの。それを活かした新しいビジネスをつくり出そうともする。「そんなユーザーから当社にユーザー管理やデバイス管理などの依頼があり、モバイルからスコープを広げていった」(鈴木社長)。

 こうしてプラットフォーム・ビジネスを展開していくKiiは、使った分だけを支払う従量課金のAWSに近いストックビジネスである。ただし、AWSはIaaSから提供するのに対して、KiiはAWSなどのIaaSを活用し、その上にデータ管理、デバイス管理、ユーザー管理などを提供する「IoTソリューションを作るためのプラットフォーム」(鈴木社長)になる。開発キットやサービス商品もそろえる。

 このIoTプラットフォームを使ったアプリの開発、販売にも乗り出す。2017年早々に提供を開始したアセット管理はその1つになる。例えば、工場に設置した機械設備にセンサーを取り付けて、稼働状況を遠隔地からリアルタイムに監視する。稼働状況のログを収集、分析し、エラーの頻度が高めると、故障を事前に予測し「そろそろメンテンナンスを」と提示する。少しカスタマイズするだけで使える汎用的なシステムである。

 アセット管理の活用は、米国市場が先行する。事例の1つが自動販売機の監視。ピザの自販機を全国展開するある企業は、ショッピングセンターやスタジアムなどに自販機を設置し、地元のピザ店に貸し出す。センターから離れた場所からピザの売れ行きなどをチェックし、売り上げを管理したり、ピザをタイミングよく補充したりする。

 このビジネスを担当する現地法人(2009年に買収した米IT企業サーボソフトウエア)は、野菜などの販売に広げることも計画する。同社はシリコンバレーなど数カ所に活動拠点を持つ。

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